フェンシング銀メダリスト・太田雄貴さんに聞く 競技の課題をテクノロジーで解決していくためのヒント

アーバンスポーツの課題は何なのか

東京2020オリンピックでは、アーバン(都市型)スポーツと言われる3x3 バスケットボール、BMXフリースタイル、スケートボード、スポーツクライミングの新種目が実施されます。従来のスポーツの枠に当てはまらず、若者や女性が都市部で気軽に楽しめるのがこれらの競技の特徴です。ただ、従来の枠に当てはまらないからこそ、どのように楽しめばいいかが分からないのもまた事実。そこでそのアーバンスポーツの観戦体験を「より分かりやすく、より楽しく、より面白く」拡張するため、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、「TOKYO 2020 Open Innovation Challenge」というアプリケーション開発コンテストを行い、世界中の方とともに、イノベーションの創出を目指すことを発表しました。

特別審査委員の太田雄貴さん。コンテストの応募者にヒントを与えてくれました

特別審査委員には北京2008オリンピックのフルーレ個人、ロンドン2012オリンピックのフルーレ団体で銀メダルを獲得した太田雄貴さんも名を連ねています。太田さんはリオデジャネイロ2016オリンピックを最後に引退し、翌2017年に公益社団法人日本フェンシング協会会長に就任。以来、日本では決してメジャーとは言えないフェンシングを人気興行とすべく、スポーツイベントであまり使用されたことのない劇場型の会場で大会を開催するなど、大胆な挑戦を続けています。

「自分はアイデアマンではないですが」と前置きしつつ、太田さんはコンテストの応募者に向けて1つのヒントを投げかけてくれました。

「4つの競技の課題が何なのかを前提条件として考えると、面白いかもしれないです。この競技にはこういう課題があると仮説を立て、その仮説に対して、こうしたテクノロジーを使えばこれができるんじゃないかと。やってしまいがちなのは、こんなテクノロジーがあるから何かできませんか、というパターン。それはあまりうまくいかないと思います」

アイデアをどう実行し、実装していくかが大事

フェンシングの事例を挙げると、剣先で相手を突いたときに、光る面積が小さいため、どちらにポイントが入ったのか視覚的に分かりづらいという課題があったそうです。そこでLEDランプを使用し、大きくカラフルに表示することで、そうした課題を解決すると同時に、それが新しい演出として注目を浴びることになりました。すでに世の中に存在していたフェンシングとLEDを組み合わせ、これまでにない価値を生み出すことに成功しています。

太田さん

「TOKYO 2020 Open Innovation Challenge」では、アプリケーションの開発という「実装」までが審査になっています。実際に太田さんも「アイデアをどう実行し、どう実装していくかが大事」と、その重要性を説いています。

「例えばアイデアソンなどをやると、良いアイデアがいっぱい出ます。ただ、そこからどう次のアクションを起こすか、アクションを起こすまでの時間をいかに速くするかが大事で、ある程度の失敗は織り込み済みでやっていくことが重要だと僕は思っています」

オリンピックの発展につながったテクノロジー

「ぜひオリンピックに携わってください」とメッセージを送る太田さん

今回の審査基準には「創造性と革新性」「有用性と価値の高さ」「技術的な実現可能性」「使いやすさ(UX/UIデザイン)」「技術的な先進性・拡張性」という5つがあります。いくら革新性があっても、技術的に実現できなくては価値がありませんし、たとえ実現できたとしても使いづらくては、人々の間で広がっていきません。そうした中でヒントとなるのは太田さんが先に述べたとおり、それぞれの競技における課題をどう捉えるかです。審査基準はなかなか厳しいですが、太田さんは応募者にこうメッセージを送ります。

「ぜひオリンピックに携わってください。オリンピックは選手のためだけにあるものではない。スポーツを通して世界に感動を伝えていくことが、オリンピックの持つ力だと僕は思っています。会場に行ける人は限られていますが、テレビやインターネットなどいろいろなテクノロジーを使うことによって、多くの人が観戦できるようになったことが、オリンピックの発展につながったと思います。映像だけではなく、新しいアイデアを実装できたものが見られたらうれしいです」

TOKYO 2020 Open Innovation Challenge詳細