「スポーツの力」と復興する被災地東北の今~東北メディアツアーレポート~

東日本大震災から7年が経ち、復興に向けて力強く歩みを続ける東北の今と、被災地でオリンピアンやアスリート達がスポーツを通じて人々に勇気や希望を与える姿を外国メディアの方々に見ていただくことを目的に、「東北メディアツアー」が2018年9月7日、8日の2日間にかけて行われました。
ツアーの直前まで開催されていたワールドプレスブリーフィング(1)のオプショナルツアーとして東京都が主催したこのツアーには、来日していた海外ジャーナリストを中心に13か国24名の海外ジャーナリスト(2)が参加しました。

1 東京2020組織委員会が国内外のメディアを招待して行った会合で、東京2020大会についての準備状況や、取材体制についての情報提供が行われた。

2 参加者の国籍は、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、ナイジェリア、インド、モンゴル、バングラデシュ、パキスタン、ベトナム、スリランカ、日本。

応急対応拠点から東京2020大会サッカー競技会場へ

ツアー最初の訪問は、宮城県宮城郡利府町にある宮城スタジアムでした。東北最大級を誇るスタジアムは、震災時には、施設屋根が損壊しつつも、国内外の救援部隊の応急対応拠点として使用されました。会場には、熊谷大利府町長も出席し、東京2020大会でサッカーの競技会場になることや、震災時の様子などを海外記者に説明しました。

スポーツの力1 「スポーツ笑顔の教室」

体育館で体を動かす子供たち

授業の様子

参加者が続いて訪問したのは、宮城県東松島市にある宮野森小学校です。宮野森小学校は「森の学校」をコンセプトに、津波被害などにより被害を受けた野蒜小学校と児童数が減少していた宮戸小学校が統合し、2016年に高台に宮城県初の木造小学校として建設されました。参加者たちは、この学校で日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本サッカー協会、日本トップリーグ連携機構が主催する特別授業「スポーツ笑顔の教室」を見学しました。「スポーツ笑顔の教室」は、日本のスポーツ界が一丸となって東日本大震災で被災した子供たちの"こころの回復"を支援するプロジェクトの一つで、この日はオリンピアンの馬淵智子さん(ソフトボール/北京2008大会)が一日講師となって地元の子供たちと一緒に体育館で運動した後、教室に移動して自身の体験談とともに「夢」を持つこと、そしてそれの為に努力することの素晴らしさについて講義しました。「スポーツ笑顔の教室」は、2011年にスタートして以来、これまでに450人以上のアスリート講師による3,000回以上の授業を実施し、84,000人以上の子供たちに笑顔を届けています。

被害率最大の自治体からの復興まちづくり 女川町

女川駅前の様子

コバルトーレ女川とのトークセッション

ツアー参加者はバスの中で宮城県の食材を使用したお弁当を食べ、3つ目の訪問地である宮城県女川町へと向かいました。女川町は、東日本大震災で最大規模の被害を受けましたが、中心部に商店街や病院などの都市機能を集中させる復興まちづくりを進め、2015年3月にはJR石巻線全線再開とともに新しい女川駅が完成し、12月には商業施設もオープンしました。
参加者たちは須田善明女川町長に復興に関する説明を受けた後、女川をホームタウンにするサッカークラブ「コバルトーレ女川」の阿部裕司ジェネラルマネージャーと初めての地元出身選手となった千葉洸星選手のトークセッションに参加しました。二人からはチームとしてJリーグ入りを目指すだけでなく、スポーツを通じて町を元気づけたいという話を聞きました。

また、東京2020組織委員会主催のポスター募集企画で、2017年に金賞を受賞した女川小学校6年生の鈴木御代(みだい)さんがステージに登壇し、パラリンピックをテーマにしたポスターについて説明しました。テーマは笑顔で、障がいは個性であり、隠す必要はなく、目立つよう障がいのある部分を金メダルの金にした、という説明に多くの外国記者が頷いていました。

鈴木御代さんと海外メディアの記者

スポーツの力2 「オリンピックデー・フェスタ」

ツアー2日目は、福島県西部に位置する昭和村から始まりました。福島県は東日本大震災で被害が大きかった県ですが、沿岸から遠く山の中に位置する昭和村では、地震や津波などによる直接的な被害はほとんどありませんでした。しかし、放射能の「風評被害」により、主力の観光客は激減し、農産物の販売も減るなど地域経済は大きな影響を受けています。参加者が訪問したのは、「オリンピックデー・フェスタ」という交流イベントが行われている村内の小学校でした。オリンピックデー・フェスタは、JOCが主催する復興支援プロジェクトで、オリンピアンやアスリートが被災地を訪問し、地元の子供たちを中心に、親子、高齢者の方々とスポーツを通じて交流する様子を見学しました。

この日のイベントには、中村真衣さん(水泳/シドニー2000大会)、杉本美香さん(柔道/ロンドン2012大会)をはじめ計6名のオリンピアンが、約100名の地元住民の方々とスポーツを通じて交流し、笑顔を浮かべていました。

アスリートとふれあう子どもたち

撮影する海外メディア

福島県の文化体験

ツアー最後の目的地は、歴史的な名所が集まる人気観光地でもある会津若松市です。参加者はまず会津地方の伝統的な郷土料理である「わっぱ飯」を地元の料亭で味わった後、老舗の酒蔵を訪問し、福島の名産品の一つである日本酒ができるまでの工程を見学しました。最後の訪問地は、難攻不落の名城と呼ばれた鶴ヶ城で、2日間にわたるツアーは全行程を終了しました。

福島県は、東京2020大会では、聖火リレーが2020年3月26日に福島県から出発することが決まっている他、オリンピック開会式の2日前に県内のあづま球場でソフトボールの競技が開幕することが予定されており、また、同じく競技種目である野球の開幕戦も福島県で行われる予定です。