北澤豪×加藤健人 2020年につなぐパス 第4回 「スポーツが与えてくれるもの」

3月5日は東京2020パラリンピック競技大会の2000日前。
これを記念して、サッカー元日本代表の北澤豪氏とブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手の対談を5回に分けてお届けします。


第4回「スポーツが与えてくれるもの」

ピッチの上は"自分を一番出せるところ"
—日本ブラインドサッカー協会は、競技・普及活動だけではなく、ブラインドサッカーを通じて得られる学びを提供する、ワークショップや授業などのプログラムを実施しています。
加藤 いま、協会は「スポ育」というのをやっています。学校の教育の一つとしてブラインドサッカーの要素を使ったワークを楽しくやってもらって、コミュニケーションだったり、障がい者への理解を促すという取り組みを行っています。そこにブラインドサッカーの選手も参加するのですが、デモンストレーションを見せると「おぉっ」と声があがります。グラウンドや体育館に行くまでは白い杖をついて一緒に教える講師と歩いていくので、いざプレーをすると、子どもたちも驚きますね。でも、教室やトイレまで行くときは、子どもたちの力を借ります。そういうことで少しずつ理解してもらえるのかなと思います。単に視覚障がい者の話をしていると「かわいそうだな」とか「大変そうだな」で終わってしまうと思うんですけど、ブラインドサッカーを体験する、自分のプレーを見せることで少しずつ変わっていくのかなと。
北澤 ブラインドサッカーに限らず、障がい者スポーツから僕たちが教わることというのは本当に多い。例えば、僕らが何となく使っている「集中しろよ」という言葉。だけど、本当に集中することはどういうことなのかわかっていなかったりする。ブラインドサッカーで「見る」ことができない状態でプレーすると、それがわかってくると思います。


—障がい者スポーツは「周りの人に支えられてやるもの」というイメージがありましたが、ブラインドサッカーは障がい者から積極的に健常者に対してメッセージを発信しています。
北澤 もしかしたら我々が知らないだけで、世界ではそういう活動をしているのかもしれない。健常者と障がい者を分けるのではなく、お互いが協力し合っているからこそ、そういった視点が持てるんじゃないかと思います。協会が始めることで、新たなスポーツの見方ができるんじゃないかと思います。


—北澤さんは「ブラインドサッカーの日本代表選手たちは、あのピッチの上で解き放たれる」というお話をされていました。加藤選手にとって、ピッチの上というのは自分を表現できる場所ですか?
加藤 そうですね。ピッチの上は"自分を一番出せるところ"だと思っています。視覚に障がいがあると、日常生活で不便な部分がたくさんあります。でも、ピッチの上は自分たちが自由に動ける場所。見える見えないは関係なく、自分がやりたいプレーとかチームプレーがたくさんできます。
北澤 ピッチに入るときや、交代で出て行くときは介助の人が付いていかなければいけない。だけど、ピッチ上では介助は必要ない。彼らがピッチで見せる、あのすさまじい動きや気迫というのは、自分自身が解き放たれることによって生まれているのではないかと思います。


すごいことをやっている人たちを見に行こう
—北澤さんはブラインドサッカーは「チケットを買ってでも観るスポーツ」だとお話しされていました。
北澤 ブラインドサッカーの世界選手権を観に来た人は感じたと思うけど、本当にすごいじゃないですか。ブラジルとアルゼンチンの決勝戦なんてとんでもなかったよね?
加藤 そうですね。


—加藤選手はどうやって試合を見るんですか?
加藤 音を聞いていれば、ブラジルの選手がボールを奪われないことや、ドリブルのスピード感などはわかります。アルゼンチンの選手のディフェンスもすごかった。見ている人にとっては不思議だと思います。「どうして見えてないのにあんなプレーができるんだろう」って。昨年、東京で世界選手権が行われたことで、いろいろな人たちにブラインドサッカーを見てもらえたことは、大きかったと思いますし、ブラインドサッカー自体の良さが、すごく伝わったと思います。
北澤 本当にそう思います。ブラインドサッカーに限らず、障がい者スポーツを「見に行ってあげよう」というのではなく、「すごいことをやっている人たちを見に行こう」という感覚になってほしいですね。


第5回 「東京2020パラリンピックまで、あと2000日」 につづく...



第1回「2人のサッカー少年」
第2回「ブラインドサッカーとの出会い」
第3回「日本代表への招集。 その時・・・」


東京2020パラリンピック競技大会 22の競技
東京2020パラリンピック競技大会では、ブラインドサッカー(5人制サッカー)を含む22の競技が実施されます。
全22競技については、こちら(別ウィンドウで開く)

ブラインドサッカーとは?
ブラインドサッカーは5人制で行われる、フットサルに似たスポーツで、パラリンピック競技大会の正式競技です。フットサルと大きく違う点は、ゴールキーパー以外のフィールドプレイヤー4人が、アイマスクをしていることです。ボールには鈴が入っており、選手たちは鈴の音と自分たちが攻撃するゴールの後ろで指示を出すコーラーというガイドの声で状況を判断しプレーします。
ブラインドサッカーについてもっと知りたい方は、こちら(別ウィンドウで開く)
加藤健人選手 対談の様子 北沢豪さん ブラインドサッカー日本代表チームの選手たち

ピッチの上が“自分を一番出せるところ”