北澤豪×加藤健人 2020年につなぐパス 第2回 「ブラインドサッカーとの出会い」

3月5日は東京2020パラリンピック競技大会の2000日前。
これを記念して、サッカー元日本代表の北澤豪氏とブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手の対談を5回に分けてお届けします。


第2回 「ブラインドサッカーとの出会い」

これならできるんじゃないか
—加藤選手がブラインドサッカーと出会ったきっかけは?
加藤 高校は卒業したんですけど、どうしていいかわからず家に引きこもりがちになっていました。「何もしたくない」という気持ちだったんです。だけど、たまたま両親がブラインドサッカーのホームページを見つけてくれて「健人、これならできるんじゃないか」と薦めてくれたのがブラインドサッカーとの出会いでした。
北澤 お父さんはサッカーをしていたの?
加藤 いや、野球でした(笑)。
北澤 「ブラインドサッカーというスポーツがある」と知ったときの気持ちは?
加藤 今はメディアや日本ブラインドサッカー協会の方が頑張ってくれて、いろいろなところでブラインドサッカーの存在を知る機会も増えたと思うんです。だけど、10年以上前は、まだメディアにもほとんど取り上げられていなかったので、「よく見つけてくれたな」と思いました。僕自身も、まさか視覚障がい者にサッカーができるなんて思っていなかったので。
北澤 すんなりやってみようと思ったの?
加藤 最初はイメージが湧きませんでした。アイマスクをして、音の鳴るボールでサッカーをするってどういうことなんだろう、と。ブラインドサッカーをやっている場所が筑波にあったので、そこの方と連絡を取って父親と一緒に見学に行きました。その時はびっくりしましたね。


—北澤さんがブラインドサッカーと出会ったのはいつですか?
北澤 2002年ぐらいです。でも実はその前にも、千葉県にある盲学校の「ペガサス」というチームとヴェルディのグラウンドで一緒にサッカーをする機会があったので、ブラインドサッカーの存在は知っていました。日本代表の大先輩である釜本邦茂さんのお姉さん(釜本美佐子さん)が日本ブラインドサッカー協会の理事長を務められていて、「協力してもらえないか」と連絡をもらったのが始まりでした。


音を視る
—協会が立ち上がったのが2002年ですから、立ち上げた当初だったということですね。
北澤 当時、日本で活動していたのは3チームだけでした。話をもらったときに思ったのは「夢があるな」ということでした。面白そうというか、これからどういう風に変わっていくんだろうという興味が湧きました。でも、みんな今のようなレベルではなかったですね。ガンガン壁にぶつかって、ミスも多くて。ただ、その時でも「すごい」と思ったんですよ。僕も実際にやってみたけれど、ほとんどできなかったから。だから当時と今のレベルを比べると、この成長はすごいと思います。
加藤 日本代表で僕のように元々サッカーをやっていた人というのは珍しいケースなんです。先天性なり小さい時に障がいを持った人はサッカーの経験がないので、プレーするイメージもない。そういった人に対してサッカーを教えるのも難しいことだと思います。
北澤 加藤くんのプレーを見ていると、「サッカーをやっていた人の動きだな」というのは感じる。運動量が豊富で、バランスをとっていて。現役時代の自分のようだなと(笑)。
加藤 ポジショニングはカギになるので、サッカーをやっていた経験は活きていると思います。


—ブラインドサッカーでは、人間の情報収集の7~8割を担うと言われる「視覚」を使わずにプレーしなければいけません。ボールから音が出るとはいえ、どのようにして動くボールの位置をとらえているのでしょうか。
加藤 『音を視る』というのが正しい表現なのかもしれません。片方の耳で聞こうとすると体がずれてしまうので、音の方を向いて、両耳を使って音を聞き分けながら、ボールの位置をイメージしていくんです。
北澤 うまくいかなくてへこたれることはなかった?
加藤 僕の中でブラインドサッカーの一番難しいところはトラップなんです。サッカーをやってきた人間からすると、トラップというのは誰でもできるプレー。それが思うようにできなくなったことがショックでした。本当に「練習あるのみ」でした。
北澤 僕もブラインドサッカーをやったときに感じたけど、すごく疲れるよね。
加藤 はい、精神的にも疲れます。運動能力以外に頭も使うので。もともと見えている人が初めてプレーすると、疲れてしまうと思います。見えない中でやる恐怖心もあると思いますし。
北澤 ブラインドサッカーをした後は、今まで当たり前にしていたことをちゃんとしないといけない、という気持ちになる。相手の言葉を聞くとか、もっとできることはあるんじゃないかと思わされる。これを読んだみなさんにも、ぜひ体験してほしいですね。


第3回 「日本代表への招集。 その時・・・」 につづく...



第1回「2人のサッカー少年」


東京2020パラリンピック競技大会 22の競技
東京2020パラリンピック競技大会では、ブラインドサッカー(5人制サッカー)を含む22の競技が実施されます。
全22競技については、こちら(別ウィンドウで開く)

ブラインドサッカーとは?
ブラインドサッカーは5人制で行われる、フットサルに似たスポーツで、パラリンピック競技大会の正式競技です。フットサルと大きく違う点は、ゴールキーパー以外のフィールドプレイヤー4人が、アイマスクをしていることです。ボールには鈴が入っており、選手たちは鈴の音と自分たちが攻撃するゴールの後ろで指示を出すコーラーというガイドの声で状況を判断しプレーします。
ブラインドサッカーについてもっと知りたい方は、こちら(別ウィンドウで開く)
対談の様子 加藤健人選手 北沢豪さん ブラインドサッカーを始めた当初の加藤選手