「東京2020アイディアソンVol.3」開催レポート

東京2020アイディアソンVol.3に参加した皆さん

2019年9月25日(水)、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は東京2020大会の準備や運営における様々な分野での課題解決に向けてアイディアを生み出すイベント「東京2020アイディアソンVol.3」を開催しました。

第3回目となる今回のテーマは「暑さ対策」です。全ての観客のみなさまが、暑さをしのぎ、楽しく競技観戦できる大会にするために、組織委員会では、施設のハード面や大会運営上の工夫をしています。しかし「暑さ対策」はオリンピック・パラリンピック期間に限ったものではありません。昨今では、社会課題となっています。そこで2020年を契機に、市民の自助や地域での互助共助の視点から、自ら身近にできるアクションや、その後のより良い社会形成にもつなげていくことができる猛暑対策について学生、社会人、起業家など総勢47名が協力し、アイディアを出し合いました。題して「東京2020アイディアソンVol.3 Beat the Heat ~猛暑対策大会議~」。当日の様子をレポートいたします。

開会挨拶・開催背景の共有
初めに、室伏広治 (東京2020組織委員会スポーツディレクター)より「本日参加していただいた皆様から、暑さ対策という観点からアイディアを出すことで、さらに大会を成功へと導いていきたい」と開会の挨拶がありました。

挨拶する室伏広治東京2020組織委員会スポーツディレクター

続いて、中村英正(東京2020組織委員会ゲームズ・デリバリー・オフィサー)より、組織委員会の取り組んでいる暑さ対策についての説明と、参加者の皆さんにアイディア提案をいただきたいテーマについて発表いたしました。

テーマを発表する中村英正東京2020組織委員会ゲームズ・デリバリー・オフィサー

「暑さ対策は色々な施策を様々な角度から実施する必要があり、参加者のアイディアも活かして乗り越えていきたい」ということで設定したテーマは次の3つです。

  • 「自助や地域での互助共助で行える暑さ対策 ~自身や周りと連携して行える身近な暑さ対策とは~」
  • 「情報伝達が難しい高齢者、訪日外国人などに対して暑さの情報をどのようにして確実に届けるか」
  • 「暑さという社会課題にどう立ち向かうか ~地球環境との調和を図りながら進められる暑さ対策とは~」

キーノートスピーチ
熱中症発症のメカニズムを知った上で、より効果的なアイディアを出すために、三宅康史教授 (帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長)より、「熱中症の病態と対策」についてご講演いただきました。
熱中症の2つのパターンや熱中症の仕組みに加え、東京2020大会における熱中症が疑われる人に対しての適切な処置の解説がありました。例えば、「F・I・R・E」をキーワードとした「F:Fuild 水分補給」「I:Icing 冷却」「R:Rest 安静」「E:Emergency 通報」が有効とのことです。

基調講演をする三宅康史教授

ゲストによるトークセッション「あなたのBeat the Heatストーリー」

キーノートスピーチに続いて、『ゲストによる「あなたのBeat the Heatストーリー」トークセッション』を実施し、6名のゲストの方にそれぞれの専門性を活かして、アイディア出しのヒントとなるような話題を提供いただきました。

6名のゲストによるトークセッション

・川添高志 氏 / ケアプロ株式会社 代表取締役社長
熱中症になりやすい高齢者等は、自身の症状について訴える事が出来ないことが多いという事実があります。そういった方たちに向けて「何ができるか」という観点でお話しをいただきました。

トークセッションで発言する川添高志 氏

・玄正慎 氏 / Coaido株式会社 代表取締役
ある調査によると、日本人は人助けをするのが苦手という結果が出ており、その原因の一つに「傍観者効果」があると述べられていました。傍観者効果を乗り越えて、互助共助をするために「どのように対応ができるか」についてお話しいただきました。

トークセッションで発言する玄正慎 氏

・小澤貴裕 氏 / 一般社団法人ファストエイド 代表理事
救急車が熱中症と想定される人のもとに向かう際は、車の中を冷房で冷やした状態にしていることをヒントに、似た環境を実現するにはどのようにしたらいいかという観点で、「どうすれば、暑熱環境から臨機応変に避難できる体制が作れるのか」という話題をご提供いただきました。

トークセッションで発言する小澤貴裕 氏

・丸井朱里 氏 /早稲田大学人間科学学術院 助教/株式会社HERBIO CRO
人が暑いときに体温を調節する学術的な仕組みをご説明いただきました。また、暑いときにどんな行動を取っていたかを振り返ったうえで、身近にできるアイディアを出したいという考えのもと、「自律性体温調節と行動性体温調節を理解して暑さを乗り越えよう」というテーマでお話しいただきました。

トークセッションで発言する丸井朱里 氏

・黒須健 氏 / 株式会社Nature Innovation Group 取締役
熱中症になりやすいのは男性が多いというデータから、「日傘男子」の普及を目指すことで予防ができないかとの考えをご提示いただきました。また、ビニール傘の使用による、プラスチックごみの問題にも言及し「日傘の普及、ビニール傘の削減」というトピックで話題を提供いただきました。

トークセッションで発言する黒須健 氏

・清水滉允 氏 / 株式会社Arblet 代表取締役
熱中症の一つの原因でもある脱水症状は、利尿作用のある薬を飲んでいる高血圧の人がなりやすく、水分情報の可視化などが必要であるという観点から考えて「ことばに出来ない体内変化を可視化・数値化できたらどう活用するか」という点についてお話しいただきました。

トークセッションで発言する清水滉允 氏

アイディアブレスト会議

アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子

ここからいよいよ、参加者の皆さんに、興味のあるテーマのテーブルに分かれ、ゲストと共にアイディア創出のためのブレーンストーミングを実施いただき、その後テーブルごとに出てきたアイディアを全体に共有しました。出てきたアイディアとしては、「観客の水分補給を促すため、みんなで(水で)乾杯するタイミングを設ける」や、「体調悪い?など、いくつかのワードを多言語で掲載した指差し会話帳をパンフレットにつける」「涼しい場所がわかるマップをアプリで配信」「折り紙のようにつくる傘・帽子」「日本に来る飛行機(機内ビデオや機内アナウンス)や空港、両替所などで、熱中症防止策や熱中症になったときの医療連絡先を案内など、情報発信や注意喚起をする」「全員がタオルを頭上で旋回させて熱気を払う」など、多岐にわたりました。

アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子
アイディアブレスト会議の様子

講評

最後に、三宅教授、室伏、中村より、創出されたアイディアやイベントに対する講評と今後の展望についてコメントがなされました。

講評を述べる三宅康史教授
講評を述べる室伏広司治スポーツディレクター
講評を述べる中村英正 ゲームズ・デリバリー・オフィサー

三宅康史教授:

たくさんのアイディアが生まれた場になったと思う。
東京2020大会を契機に「暑さ」を社会課題として捉え、動き出されている起業家のゲストの方にとって、良いアイディアが得られ、エンカレッジされたのではないか。また、組織委員会メンバーにとっても短時間で良いアイディアを得られる機会があったことは収穫である。

室伏広治 スポーツディレクター:

お互いに気を付け合おう、情報がなかなか入らない方にみんなで声をかけ合おうという観点をはじめ、様々なアイディアが出ていた。今回は、オリンピック・パラリンピックに対して暑さ対策の観点から何ができるかというテーマであったが、このような議論をしたことが東京2020大会後にも続く暑さから、自身や身の回りの大切な人を守っていくようなレガシー創出になる兆しを感じた。

中村英正 ゲームズ・デリバリー・オフィサー:

この場を聞くだけにせずに、出てきたアイディアをそのまま活用することや、アレンジすることが私たちの宿題。実現可能性は分からないが、来年の対策の中に取り入れられることが出来ればうれしい。一人一人のアイディアを出し合った今日の場が共助になっていてとてもよかった。

東京2020クーリングプロジェクト ロゴ

イベントを終えて

もはや社会課題となっている「暑さ」について、組織委員会では様々な観点から検討し、暑さ対策を講じますが、暑さを回避するには、それらのみで万全な体制がとれるということではありません。イベント当日は、東京2020大会のために会場へお越しいただく観客の皆さんに、熱中症予防の必要性を理解いただくことや、周りを気づかい助け合い、「身近にできる暑さ対策」を講じていただくにはどうすればよいか、集まった参加者の皆さんが真摯に話し合ってくださり、たくさんのアイディアだけでなく、大会成功へのエールをいただきました。

東京2020組織委員会では、いただいたアイディアの中から具現化できそうなものについて、いくつか検討を開始しており、暑さ対策グッズの商品化、観戦中の水分摂取を促すアナウンス手段、会場までの暑さ対策など、今後、大会本番に向けて活かすことができればと検討してまいります。

※「アイディアソン」とは
アイディアとマラソンを掛け合わせた造語。特定のテーマについて、多彩なメンバーが対話し新たなアイディアや行動計画およびビジネスモデルを考える。