東北の空を彩った憧れのブルーインパルス 航空自衛隊整備員 鈴木里穂さんインタビュー

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ブルーインパルスの操縦以外のすべてを担う「ドルフィンキーパーズ」。今回、ブルーインパルスに憧れ続けて航空自衛隊に入隊、2020年1月に念願の松島基地に配属になった女性整備員鈴木里穂3等空曹にお話をお伺いしました。5番機を担当した彼女は福島県いわき市出身。鈴木3曹の東京2020大会への特別な想いとは。

動画:航空自衛隊松島基地 「ドルフィンキーパーズ」鈴木里穂3等空曹インタビュー
06:54

2020年3月20日(金・祝)に航空自衛隊松島基地で行われた、東京2020オリンピック聖火リレー聖火到着式で56年ぶりにオリンピックシンボルを描いた航空自衛隊アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」。5色のカラースモークで東北の空を彩った姿に、見上げていた人々は拍手を送りました。そのブルーインパルスに、同じように憧れ、地上からパイロットの無事を祈っていたのが航空自衛隊で整備員の鈴木里穂3等空曹です。

「風が強くて残念だったけれど、無事成功してよかったです。自分たちが準備してきたものが形となって現れてくれました」

東北の空を5色のオリンピックカラーで彩ったブルーインパルス
東北の空を5色のオリンピックカラーで彩ったブルーインパルス

「かっこいい」と一目ぼれ

鈴木さんは松島基地がある宮城県の隣県、福島県いわき市出身。幼い頃からいつも空を見上げていました。飛行機が大好きで、初めは民間の航空会社で貨物などを管理する仕事がしたいと、専門学校に通いました。その時見に行った航空自衛隊の航空祭で運命の出会いを果たします。初めてブルーインパルスを見て「かっこいい」と一目ぼれし、航空自衛隊の整備員になるため入隊を決めました。

入隊後は2つの基地で勤務し、今年1月に念願の「松島基地」へ配属。

「本当に驚きました。まさか自分が行けるとは思っていなかったので、うれしくて信じられませんでした。最近まで実感がわかなくて、本当に自分はここにいるのかな?と変な気持ちです」

ブルーインパルスは、機体に担当整備員(機付長)の名前が入ります。鈴木さんも初めて、5番機の左側面に自ら「R.SUZUKI」の文字をペイントしました。

「本当にうれしくて、この機体がかわいくてしょうがないです。憧れの機体です」

機付(機体の主担当)になると機体に書かれるという整備員の名前。鈴木さんの名前は担当する5番機に書かれている
機付(機体の主担当)になると機体に書かれるという整備員の名前。鈴木さんの名前は担当する5番機に書かれている

休みの日はおしゃれをして、買い物に行くのが好きだという鈴木さん。かばんの中にはいつも、ハンドクリームと日焼け止め、リップクリームを入れています。

「外での作業なので、結構高い日焼け止めを買っているのですが、塗っても塗っても真っ黒になるんです。それでも、とりあえず美白、美白で頑張っています」

約30名の整備員の中で女性は2人。男性整備員と比べ、力の差を感じることも多いと言います。それでも負けたくないと、体力をつけるために走るなど努力をしています。

「食べることが大好きで、ラーメンが大好きです。替え玉は3つぐらい食べてしまいます。今日は食堂でひとつしかもらえないアイスクリームを2つもらえてラッキーでした。同僚がくれたんです(笑)」と鈴木さんが満面の笑みで話していると、同僚の男性整備員の方が、「誰よりも食べるし、しかも早く食べます。本当に周りを明るくしてくれるし、誰よりも実は一生懸命です」と教えてくれました。

男性整備員と力の差を感じることもあるという。トレーニングでその差を補う努力家だ
男性整備員と力の差を感じることもあるという。トレーニングでその差を補う努力家だ

カラースモークに12機の整備

オリンピックシンボルをカラースモークで描くかもしれない。

ブルーインパルスは20年以上前からカラースモークの使用を中止しているため、その方法を知る整備員は少なく、手探りで一つひとつ準備を進めていきました。

そして5色のスモークで描くためには、5機と先導機、1編隊6機が必要で、スモークが出ない時などに備えてもう1編隊を用意し、計12機が同時に飛び立つことになりました。12機が空を飛ぶことも、経験のないことでした。

「今回、12機と機数が多く、整備をするだけでも大変でした。それに加えてカラースモークオイルを入れるので、フライト後、オイルタンクを洗浄するために、一度すべてを排油して通常の白色スモーク用オイルを補給し、再度それを排油するという作業が必要で、その作業をこの限られた人数の中でやるというのがすごく大変でした」

56年ぶりのカラースモークは経験者が少なく苦労の連続だったという
56年ぶりのカラースモークは経験者が少なく苦労の連続だったという

オリンピックシンボルの真ん中の黒い円を描いた5番機が鈴木さんの担当。パイロットからも「この機体ピカピカだね」と言われるほど、磨き上げることを大切にしています。
「虫を見つけたら、すぐ拭きます。もう、何で(また虫が)ついてるの?みたいな。」
訓練を頑張ってほしい、無事に帰ってきてほしいという気持ちを込めて……

東北の空を彩り、日本中を明るく

東京2020オリンピックで期待しているのは陸上競技。実は小学生のころから高校生までハードル競技の選手で、福島県内でも入賞するほどの実力でした。そんな陸上に打ち込んでいた頃、東日本大震災が発生しました。

「私は当時、高校2年生だったんですけど、初めて避難訓練以外で机の下に潜って、実際に揺れを感じて、ああ自分、死ぬかもしれないと思ったので……。言葉がまとまらないですね」

自身も経験した東日本大震災、そして、目の当たりにしてきた東北の復興。だからこそ、憧れ続けるブルーインパルスが、オリンピックシンボルを描き日本中を明るくしてほしいと願います。

「(家に)まだ帰れない方もいますし、まだ家族が見つかっていないという方もいらっしゃいます。今回の復興オリンピック・パラリンピックで少しでも被災された方々が、元気になってくれればいいなと思います」

ブルーインパルスが日本中を明るくしてほしいと語る鈴木さん
ブルーインパルスが日本中を明るくしてほしいと語る鈴木さん

地元の空を彩った憧れのブルーインパルス。
これからも多くの人に空を見上げてもらい笑顔が増えることを願いながら、東北の地で整備員として彼らの飛行を支え続けます。

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