ブルーインパルス隊長が語る聖火到着式の舞台裏

2020年3月20日、東京2020オリンピック聖火到着式。56年ぶりのカラースモークを描いた航空自衛隊アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」。当日は公共交通機関にも遅れが出るほどの強風。高難易度のミッションを成功させた、隊長の作戦とは!?

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カラースモークを使った展示飛行を披露

「天気がどうなるか心配でした。風は強かったものの、飛ばすことができてまずはホッとしています」

そう感想を語ったのは、航空自衛隊の展示飛行チーム「ブルーインパルス」の飛行隊長2等空佐 福田哲雄さん。ブルーインパルスは2020年3月20日(金・祝)に宮城県にある航空自衛隊松島基地で行われた東京2020オリンピック聖火リレー聖火到着式で、5色のカラースモークを使い、オリンピックシンボルや直線を描く展示飛行を披露しました。

この日は公共交通機関にも遅れが出るほどの強風。普段の訓練だったら飛ぶかどうかは「ぎりぎりのところ」だったそうです。とはいえ、「安全が確保されるのはもちろんですが、できることは追求していくことが我々の任務の1つでもあります」と福田さんは言います。

国民の多くが注目するセレモニーだっただけに、飛行前は隊員たちにもやや緊張が見られました。福田さんは、「飛行直前のブリーフィングではなるべく普段通りに接して、平常心でフライトに臨んでもらうように努めていました 」と振り返ります。かくいう福田さんも「みんなに平常心と言いつつ、普段の航空祭よりも緊張は大きかった」とのこと。しかし、「実際に飛行機のところに行って、整備士と話し、エンジンをかけたらいつも通りの気持ちで臨むことができました」と笑います。

「普段の航空祭よりも緊張は大きかった」と語る福田隊長
「普段の航空祭よりも緊張は大きかった」と語る福田隊長

距離を保つには、パイロットの目に頼るしかない!?

オリンピックシンボルを描いた東京1964オリンピックの話は知っていても、当時の資料は残っておらず、飛行機の機種も変わっています。オリンピックシンボルを描くうえで、どういう飛行をすれば輪がきれいに見えるのか、どういう隊形で飛べば輪が作りやすいのか。机上でシミュレーションをしながら、実際に訓練を積んできました。

最も時間を要したのは、5つの輪の前列3つ、後列2つの重なり具合と、輪と輪の間隔だったそうです。「精緻(せいち)な距離を保つには、パイロットの目に頼るしかないんです。その目で輪と輪の間隔が決まってしまう。そこは非常に苦心しましたが、訓練を重ねて、隊員が正しい位置をつかんでくれました」と、福田さんは目を細めていました。

セレモニーでは、ブルーインパルスが登場するタイミングも重要になってきます。今回は聖火皿に聖火が点火されるタイミングでしたが、セレモニーの進行具合、そして強風によって刻々と状況が変わっていきます。どうタイミングを合わせているのでしょうか。

「飛行する前には必ず、想像できるリスクをあらかじめみんなと確認をとっています。実際には地上から時間の変更は逐一私あてに無線で情報が来るのですが、無線ですので一緒に飛んでいる隊員も聞いています。地上とやり取りする中でその時間の変更に対する様々な調整を私が全てしていて、みんなも私と地上の時間調整を信じて付いてきてくれるので、みんなが付いていきづらい操作はしないように心がけていました」

地上と上空、そして隊長と隊員の信頼関係に加え、綿密な作戦が難易度の高いミッションを可能にさせているのです。

聖火到着式本番当日、直前のブリーフィングの様子
聖火到着式本番当日、直前のブリーフィングの様子

復興の一助になればという気持ちで

復興オリンピック・パラリンピックと位置付けられる東京2020大会。東日本大震災から9年が経ちますが、「街の風景は様変わりして、いまだ更地のところも多い」と、福田さんは言います。被災した松島基地で難を逃れたブルーインパルスは復興のシンボルとされています。

「多くの皆さんの苦労のもとに、今の我々があります。我々のフライトを通じて、地域の皆さんには元気になってもらいたいですし、復興の一助になればという気持ちでいつも飛ばせてもらっています」

聖火到着式が行われたこの日、ブルーインパルスの展示飛行を見ていた人々は大きな拍手を送っていました。福田さんら隊員たちの思いは、彼らの胸に確実に届いていることでしょう。

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2020年3月20日(金)、宮城県にある航空自衛隊・松島基地で行われた東京2020オリンピック聖火到着式の様子を、ブルーインパルス目線でお楽しみください。VR映像もお楽しみいただけます。

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