Photo by Laurence Griffiths/Getty Images
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大海原のレースを制するカギは、自然との共闘。クルーがひとつになったとき、船に命が宿る

競技紹介アニメーション「One Minute, One Sport」

セーリングのルールや見どころを1分間の手書きアニメーション動画でご紹介します。セーリングに詳しい人も、そうでない人も、まずは動画をチェック!

One Minute, One Sport セーリング
01:28

競技概要

セーリングのオリンピックにおける歴史は古く、第2回パリ1900大会から実施され、アトランタ1996大会までは「ヨット」の呼称、シドニー2000大会から現在の「セーリング」が競技名となっている。

ヨットはオランダで発祥し、輸送や連絡などの実用目的で活用されていたが、1660年にイギリス国王とヨーク公が初めてヨットレースを行ったのがスポーツとしてのヨットの起源といわれている。その後ヨット競技はおもに上流階級のレジャーとしてヨーロッパ諸国に広まり、大陸を渡ってアメリカなどにも伝わった。20世紀半ばになるとアメリカでウィンドサーフィンが盛んになり、ロサンゼルス1984大会からヨット競技の一つとしてウィンドサーフィンが種目に加えられている。

種目

  • RS:X級(男子/女子)
  • レーザー級(男子)
  • レーザーラジアル級(女子)
  • フィン級(男子)
  • 470級(男子/女子)
  • 49er級(男子)
  • 49erFX級(女子)
  • フォイリングナクラ17級(混合)

競技の魅力、見どころを紹介

自然環境との「共闘」が勝利を呼ぶ レースのダイナミックさは必見

海面で実施され、自然環境によって大きく試合展開を左右される競技の一つ。レースは、海面に設置されたマークと呼ばれるブイを決められた回数、決められた順序で回りながら、フィニッシュラインまでの着順を競うもの。種目は使用する艇(ヨット)の種類によって分けられ、どの種目もフィニッシュの順位の高いチームほど低い点数がつく。このレースを10〜12回行い、その合計点数の低い10艇が「メダルレース」と呼ばれる最終レースを戦うことができる。このメダルレースで最終順位とメダリストが決まる。

大きな三角形を描くコースで、艇は3方向からの風を体験した後、フィニッシュラインに到達する。必ずしもコースに沿って艇をまっすぐに走らせるばかりではない。向かい風や横風の場合は、ジグザグに走ることによって風をつかむことになる。また、コースを回るには大胆な方向転換も必要で、いかに無駄なく曲がれるかも腕の見せどころ。こうしたヨットの操作を、クルーは自らの体の位置や向きを変えることで艇全体のバランスをコントロールしながら行う。

全員で一斉にスタートする試合方式のダイナミックさも魅力だ。一斉に海面を滑り出し、最初のマークへの一番乗りをめぐって激しくしのぎを削る最初の山場は見逃せない。最初のマークを越えるとある程度の順位がつき、縦長に伸びた船団がフィニッシュラインに向かって抜きつ抜かれつの戦いを展開する。

環境の変化、他の船との位置関係、自分たちの艇のコンディションなど、刻々と変わるさまざまな条件を計算して臨機応変に戦術を組み立てられる頭脳と、実行に移す技術が必要だ。

セーリングは他の艇との戦いだけでなく、波の高さや潮の流れ、風の強さなどの大自然との戦いでもある。その自然を味方につけるようなセッティングやテクニックで勝利をつかむのである。強靭な肉体と精神力を持った選手のダイナミックな戦いに注目しよう。

Photo by Clive Mason/Getty Images
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2016 Getty Images

東京2020大会に向けた展望

古豪と新鋭の激しいメダル争い

東京2020大会で実施されるのは10種目、男子5種目、女子4種目、男女混合1種目である。リオデジャネイロ2016大会で初採用された男女混合種目「混合フォイリングナクラ17級」と女子のみの種目「49erFX級」が継続実施となった。

これまでの大会で金メダルを最も獲得しているのはイギリス。ヨットレース発祥の国として、その実績は他を圧倒している。第2のメダル獲得国は、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」で最多優勝を誇るアメリカ。他のメダル常連国にはノルウェー、スペイン、フランスなどヨーロッパ諸国が名を連ねるが、最近ではオーストラリアとニュージーランドがヨーロッパ勢に割って入る実力をつけてきており、注目されている。

種目別に見てみよう。全長4.7メートル、2人乗り「470級」(男子・女子)。男子では、数回にわたってオーストラリア・アメリカ・イギリスの三つ巴での金メダル争いが展開されていたが、リオデジャネイロ2016大会ではクロアチアが一気に金メダルチームに躍り出た。女子では、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、オランダが過去3大会でメダル争いを繰り広げている。

全長約4.9メートル、2人乗り「49er級」(男子)。最も大型のヨットで行われる。この種目はオーストラリアとニュージーランドが強さを発揮している。

セーリング最古の種目、1人乗り「フィン級」(男子)。イギリスが5連覇を果たして発祥国の面目を保っている。

世界に広く普及している小型1人乗り「レーザー級」(男子)。新興勢力のオーストラリアが2連覇中だ。

ウィンドサーフィン種目「RS:X級」(男子・女子)。男子では、2000年代に入ってメダル常連国からアメリカが姿を消し、オランダ、イギリス、フランス、イスラエルが目立つ存在となっている。女子では、メダルを獲得しているのは中国、スペイン、フランス、フィンランドなど様々だ。

東京2020大会を見据え、2017~2019年にセーリングワールドカップが日本で開催された。2020年も開催予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響のため中止となった。しかし選手たちは開催されたワールドカップや他の国際大会を通して江の島の海面に馴染み、海面攻略の戦略へとつなげるだろう。

<日本>

日本は、アトランタ1996大会「470級」女子で銀メダル、アテネ2004大会「470級」男子で銅メダルを獲得している。この種目は乗員2人合わせて約130キログラムが適正体重とされ、小柄な選手が活躍しやすいため、日本選手には「ヨンナナマル級」の呼び名で長年親しまれている。この「470級」女子において、吉田愛・吉岡美帆組が大注目だ。吉田・吉岡組は2018年セーリング世界選手権で日本女子として初めて優勝し、翌年2019年同大会で2位となり、アトランタ1996大会以来のメダルの可能性が見えてきた。

そして、「470級」男子においては、2017年470世界選手権にて5チームが20位以内に入り、日本国内での代表争いが熾烈に。その争いを制し代表に選ばれたのは岡田奎樹・外薗潤平組。代表争いを制した彼らにメダルの期待が高まる。

さらに他の種目でも日本選手にメダルの可能性が見える。「レーザーラジアル級」女子では、リオデジャネイロ2016大会に22歳の若さで出場した土居愛実が2017年レーザーラジアル級の世界選手権で銅メダルに輝いた。また「49erFX級」(女子)では、ジュニア世代の国際大会で山崎アンナ・髙野芹奈組が優勝するなど著しい成長を見せており、今後が楽しみだ。

自然環境で行われるこの競技では、「地の利」がより大きく働くことが予想できるため、日本選手の活躍に期待したい。

トリビア

(2020年3月24日現在)