マラソン

レーサーやガイドと力を合わせ、限界まで走りきる

選手の数だけ生まれる、42.195kmのドラマとは

東京2020パラリンピック 22競技紹介動画

競技の見どころや、競技特有のルール・クラス分けなどがわかる動画です。観戦計画を立てる時の参考に、観戦前の予習に、ぜひご覧ください。

東京2020パラリンピック 22競技紹介:陸上競技

競技紹介アニメーション「One Minute, One Sport」

パラリンピック マラソンのルールや見どころを1分間の手書きアニメーション動画でご紹介します。パラリンピック マラソンに詳しい人も、そうでない人も、まずは動画をチェック!

One Minute, One Sport パラ陸上競技 マラソン
01:24

競技概要

パラリンピック陸上競技の大きな特徴は、障がいの内容や程度、運動機能などによって選手がクラス分けされていることだ。障がいは選手により異なるので、公平に競技ができるように極力条件を揃えるため、レースはクラスごと、あるいは隣り合うクラスを合わせた統合クラス(コンバインド)で実施される。ロード競技であるマラソンの障がいクラスの表示はアルファベットのTと障がいの種類と程度を表す2桁の数字(T11など)で表される。
マラソンは1984年のストーク・マンデビル&ニューヨーク大会からおこなわれている。ただし、実施されるクラスは参加者数などを考慮しながら、大会ごとに検討されている。例えば、リオ2016大会では、男女視覚障がい(T12)、男子上肢障がい(T46)、男女車いす(T53/54)が実施された。
パラリンピックのマラソンのルールはオリンピックとほぼ同じだが、視覚障がいクラスは選手の必要に応じて伴走者(ガイドランナー)と走ったり、車いすクラスの選手は競技用の車いす(レーサー)を使用したりすることが認められている。体の一部ともいえる伴走者や用具との一体感もパフォーマンスを左右する重要な要素になる。

種目

  • マラソン T12(男子/女子)
  • マラソン T46(男子)
  • マラソン T54(男子/女子)

※上記の実施種目全て、同じコースを走ります

コース詳細

オリンピックスタジアム~富久町~水道橋~神保町~神田~日本橋~浅草雷門~日本橋~銀座~増上寺~銀座~日本橋~神田~神保町~皇居外苑~神保町~水道橋~富久町~オリンピックスタジアム

競技の魅力、見どころを紹介

気象や路面、起伏などと戦い 42.195kmを駆け抜ける

他の種目同様、マラソンにおいても複数のクラスが実施されるため、順位はクラスごとに決められる。なお、実施されるクラスは大会ごとに検討され、リオ2016大会では初めて視覚障がいクラスの女子が採用された。

ここでは、リオ2016大会での実施クラスを例に挙げ、レースの見どころを紹介する。視覚障がいクラスはT11とT12クラスのコンバインドで実施された。T11(全盲など)の選手は必ず、目の代わりとなって視覚から得られる情報を補い、安全に導く伴走者(ガイドランナー)と走らなければならず、T12の選手は単独走か、伴走者と走るかが選択できる。そのため、レースには単独走の選手と伴走者とのペアの選手が混在する。ペアで走る選手は伴走者とロープを握り並んで走るので、フォームを合わせるなどコンビネーションを磨くことが大切だ。選手より先に伴走者がフィニッシュラインを越すと失格となるなど、伴走者はあくまでも選手のパフォーマンスをリードではなく、サポートする存在でなければならない。現行のルールでは2人の伴走者が認められており、コース上の決められた地点で交代できる。選手は、コースの凸凹や起伏、曲がり角など、緊張感をもちながら走っている。

マラソンは気象条件も大きな要素で、気温や湿度が高い場合は完走率も低くなる。参加人数の関係で、集団でなく、単独で走ることも少なくない。過酷な条件の中、1人でペースを守り、レースをつくる精神的な強さも必要になる。

一般道路もコースとなることから、坂道などの起伏や曲がり角の数などがタイムに与える影響も大きい。また、路面状況も注意が必要で、例えば、石畳のように細かな起伏が続く路面は、視覚障がいの選手にはつまずきや転倒、車いすの選手にはレーサーのパンクなどの危険性も高い。また、急な曲がり角などで転倒する車いすの選手も少なくない。

切断など上肢に障がいがあるクラス(T45/T46)の選手は、腕の振りのバランスが重要となる。給水コップやスポンジの取り方などもそれぞれ工夫しながら、フィニッシュラインを目指す。

車いすのT53/54クラスは、少なくとも3つの車輪があり高速走行用に開発された競技用車いす(レーサー)で競技を行わなければならず、それを腕だけで駆動させて42.195キロメートルを走り抜く。レーサーの素材や性能は年々進化しているが、それを活かすには選手自身が筋力や技量を磨いたり、個々の障がいに合わせてルールの範囲内でレーサーをカスタマイズしたりするなど、使いこなすための努力が欠かせない。

東京2020大会に向けた展望

障がいごとに異なるみどころ 真夏の東京を制するのは?

視覚障がいクラス(T12男子)は近年、スペインやポルトガルなどのヨーロッパ勢と日本が有力と言われていたが、リオ2016大会を制したのはエル・アミン・シャントゥフ(モロッコ)。弱視だが単独で走る選手で、トラック競技でスピードを磨いたのち、マラソンにも挑戦。T12男子のマラソン世界最高記録(2017年5月時点)である2時間21分33秒も、シャントゥフが2015年のロンドンで行われたIPC世界陸上競技選手権でマークしたものだ。弱視で1キロメートルを3分21秒で走り抜く凄さを想像してほしい。東京2020大会ではシャントゥフが王座を守るのか、新星が現れるか、注目される。

上肢障がいクラス(T46男子)ではブラジルやスペイン、メキシコなどの出場が多いが、リオ2016大会を制したのは李朝燕(中国)だった。一方、T46男子の世界最高記録である2時間33分08秒は、ロンドン2012大会とリオ2016大会でともに銀メダルのアブデラマン・アイト・カモウチ(スペイン)がマークしている。東京2020大会では連覇を目指す左肘先欠損の李か、初制覇に挑む右上腕欠損のアイト・カモウチか、あるいは新たな選手の台頭がみられるか。

一方、車いすクラス(T54男子)の世界最高記録は1時間20分14秒。1キロメートルを1分54秒で疾走する速さを腕力だけで生み出している。平均時速30キロメートル、下り坂では時速50キロメートルに達することもあるスピード感は、レーサーならではの魅力だろう。風の抵抗を避けるため、自転車レースのように縦一列に並び集団で疾走するのも車いすレースの特徴の一つ。ペース維持のため先頭が交代する駆け引きも見応えがある。近年はラストスパート合戦で勝負が決することも多く、例えばリオ2016大会のT54女子は4位までが1秒差、7位まででも3秒差という接戦が展開された。男子はトラック競技でも強さを見せるマルセル・フグ(スイス)が初制覇。T54クラスは男女とも欧米勢を中心に有名選手が多く、東京2020大会での栄冠は誰が手にするか、目が離せない。

<日本>
パラリンピックのマラソンにおいて、日本は存在感を放ってきた。視覚障がいクラスではアトランタ1996大会で柳川春巳(T11)が、アテネ2004大会で高橋勇市(T11)が金メダル、リオ2016大会で岡村正広(T12)が銅、道下美里(T12)が銀を獲得。伝統と勢いを東京2020大会にもつなげたい。車いすクラスではアテネ2004大会、北京2008大会で高田稔浩(T52)や上与那原寛和(T52)、笹原廣喜(T54)、土田和歌子(T54)らがメダルを獲得したが、ロンドン2012大会とリオ2016大会では男女ともに表彰台を逃した。地元開催の東京2020大会で、巻き返しを狙う。

トリビア

(2020年3月24日現在)