橋本聖子会長×澤田健太郎さん(大会ボランティア)大会の顔としてセンターで活躍を、安全に安心にやりきることがレガシー

210319_S001_0137

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、フィールドキャスト(大会ボランティア)と開催9都道県のシティキャスト(都市ボランティア)合わせて、約11万人に支えられます。アスリート同様、大会の「顔」になるボランティア。今回、東京2020オリンピックでフィールドキャスト、東京2020パラリンピックではシティキャストを務める澤田健太郎さんが、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)の橋本聖子会長と対談しました。2人が「特別な大会」を待つ多くのボランティアにメッセージを送ります。

「大会で最も印象に残るのがボランティア」と語る橋本聖子会長
「大会で最も印象に残るのがボランティア」と語る橋本聖子会長

競技成績以上に記憶に残る「大会の顔」

東京2020組織委員会会長 橋本聖子(以下、橋本会長)

大会にとって、ボランティアは大切な存在です。スケート、自転車の選手としてオリンピックに出場(冬季4大会、夏季3大会)し、日本選手団役員(団長3大会、副団長1大会)としても参加しました。すべての大会で、最も印象に残るのがボランティアの方々。競技成績以上に、我々をサポートしてくださるボランティアの方の行動や笑顔が記憶に残る。ボランティアは「大会の顔」だと思っています。

澤田健太郎さん(以下、澤田さん)

ありがとうございます。私は普段、サッカー国内リーグのクラブのボランティアなどもしていますが、オリンピック・パラリンピックになると、その特別感はすごいです。大会の「顔」となれるように、また私たち自身が心から楽しめるような、そんな活動をしていきたいと思っています。

橋本会長

私が初めてオリンピックに出たのはサラエボ1984大会(冬季)、19歳でした。ボランティアという言葉も今ほど一般的ではなかったけれど、サポートしてくれる方たちのありがたみを感じました。その後、ボランティア教育が盛んになり、回を追うごとにレベルが高くなっています。東京2020大会は競技の数も多く、参加選手数も多い。いろいろな役割を持ったボランティアの方が、素晴らしい活躍をしてくれると期待しています。

澤田さん

いくつかのサッカーチームのボランティア活動を経験する中で、歴史があるチームと比べて、ボランティアの研修制度があまり整備されていないチームもある。チームの成長に、ボランティアの成長は欠かせません。大会と一緒に成長していく、それもボランティアの魅力じゃないでしょうか。

「大会の『顔』となれるように楽しみたい」と語る澤田健太郎さん
「大会の『顔』となれるように楽しみたい」と語る澤田健太郎さん

「多様」な東京2020大会ボランティアに寄せられる、世界からの期待

橋本会長

東京2020大会には、本当に多くの方がボランティアとして参加してくれます。6割が女性で、学生の方、主婦の方など様々な方がいらっしゃいます。澤田さんのようなベテランから、初めてボランティアをする人まで、また、障がいのある方もいます。残念ながら今回は、海外からの観客やボランティアの受け入れは断念することになりましたが、日本に在住する外国籍の方も多い。10代から80歳以上まで年齢層も幅広く、東京2020大会を象徴する「多様性」が、ボランティアのバックグラウンドにも表れています。

澤田さん

多様性はボランティアの楽しさでもあるんです。私はIT企業に勤めていますが、会社だとどうしても属性の似た人が多くなる。高校生や親世代と一緒に活動するボランティアの現場では、毎日がジェネレーションギャップ(笑)。それが大好きです。「そういうのが流行っているんだ」「そういう考え方があるんだ」と、毎日勉強させてもらっています。お互いのいいとこ取りができるのが、楽しいですね。

橋本会長

活動も多様ですね。フィールドキャスト(大会ボランティア)にはいろいろな役割があるし、シティキャスト(都市ボランティア)では、それぞれの都市の特徴なども知らないといけない。澤田さんは、両方なさるんですよね。

澤田さん

オリンピックはフィールドキャスト、パラリンピックはシティキャストをやります。オリンピックもパラリンピックも両方やりたいという気持ちが強かったですね。

日本人ボランティアに求められるものは? 語り合う澤田さんと橋本会長
日本人ボランティアに求められるものは? 語り合う澤田さんと橋本会長

橋本会長

(澤田さんに)プレッシャーをかけるわけではないのですが、世界も東京2020大会のボランティアには注目しています。日本人に求めるレベルが高いんです。実体験として、ボランティアには国民性がよく出る。日本人は時間に正確だけれど、わりと時間に寛容な国もある。選手団役員として厳しいこともお願いするので、途中で担当のボランティアがやめちゃったこともあったんです。日本人の取り組み姿勢については、海外の選手団も期待しています。

澤田さん

日本人の特性というか、本当にしっかりと役割をこなす。私は東京マラソンのボランティアもやっているのですが、人数という点でも研修制度という点でも、日本で一番発達している。東京2020大会のモデルになるだろうなと思っています。

橋本会長

私も実は2回ほど東京マラソンを走っているんです。ボランティアの活動を視察するために。給水所ではリーダーがいて、水を渡す人、回収する人、その連携が素晴らしい。目に見えないところまでやりきる精神。どうしてよく見えたかというと、自分の走りが遅かったからです(笑)。そんなボランティアの活動ぶりは、東京2020大会の見るべき点の一つかと思います。大きな話をすれば、海外の人たちに対するそういう接し方が、外交にもつながってくる。「おもてなし」の文化ですね。

澤田さん

私がボランティアをしていたサッカーのクラブが優勝カップをサポーターに公開したことがあり、その時の私の役目は優勝カップを守ることでした。ただ、現場では守るだけじゃない。多くのサポーターとも優勝の喜びを分かち合いたい。実際の私の活動はほとんどが記念撮影カメラマンでした(笑)。もちろん、カップを守るという大前提はあるけれど、どうやったら多くの人に笑顔で帰ってもらえるか。何百人もの方のスマホで優勝カップとの記念写真を撮ったことで、素晴らしい経験をお手伝いできたと思っています。それも、ボランティアの喜びですね。

豊富なボランティア経験から思いを語る澤田さん
豊富なボランティア経験から思いを語る澤田さん

「安全・安心な東京2020大会」の中心で活躍を

橋本会長

大会が1年延期され、ボランティアの方々にも多くのご苦労をかけていると思っています。ただ、そんな中でもほとんどの方に引き続きやっていただける。うれしいことです。

澤田さん

研修がリモートになって、大変な面もありました。「パソコンが無い」「スマホが無い」からでしたから。対面でないと信頼関係を築くのが難しいなどありますが、みなさんできる範囲で準備をして、大会を楽しみにしていると思います。

橋本会長

昨年のアンケートでは、ボランティアの約7割の方が新型コロナウイルス感染症や、感染症対策への不安をあげていらっしゃいました。ボランティアの方にも、アスリートや関係者の方にも不安がないように、ガイドラインをしっかり作り、安心して大会を成功させるようにするのが、私の務めだと思っています。感染症、そして暑さ対策。これをやりきらないと、東京2020大会の成功はないですから。

「ボランティアの方が安心して活動できる大会に」と語る橋本会長
「ボランティアの方が安心して活動できる大会に」と語る橋本会長

澤田さん

東京2020組織委員会には、ぜひボランティアへの発信もお願いしたい。あるサッカークラブは観客に対する感染症対策を細かくホームページで発信していました。私は「ボランティア向けにも発信してください」とお願いしたんです。正直、我々にも不安はあります。ただ、東京2020組織委員会にはっきりと方針を出してもらえれば、安心できると思います。

橋本会長

アスリート、観客向けはもちろん、ボランティアのみなさんに対しても対策を明確に示していく必要がありますね。海外からの観客受け入れを断念するなど当初予定したフルスタジアムからは縮小する形になりますが、大会延期の経験は今回が初めて。ボランティアの活躍には、世界も注目しています。新しい「東京モデル」の肝になると思うんです。ボランティアのみなさんには、アスリートと同じように大会のセンターで活躍していただきたい。「安全・安心に大会をやりきった」。それが、東京2020大会のレガシーになると思います。

澤田さん

今、おっしゃっていただいた通りです。私たちは新幹線など東京1964大会のレガシーの中で生活してきました。では、東京2020大会のレガシーって何だろうと。それは、首都高や新幹線などの「ハード」ではなく、「ソフト」レガシーだと思うんです。オリンピズムやSDGs(持続可能な開発目標)など人々の考え方の変革なのかもしれないなと。大会が終わって日常が戻ったとき、社会が変わっていければ。そのきっかけとなる役目を担っているのが、私たちボランティアだと思っています。

「支えあう社会に」それは東京2020大会が残したいソフトレガシー
「支えあう社会に」それは東京2020大会が残したいソフトレガシー