被災地の思いに触れながら 東京2020 復興のモニュメントを制作する学生たち

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「東京2020 復興のモニュメント」は、東京2020大会を通じた被災地復興の後押しを目指すプロジェクトです。東日本大震災で被災した東北3県の中学生・高校生からのメッセージを東京藝術大学の学生たちがプレート化し、取り付けたモニュメントを大会期間中に大会関連施設に展示します。プレートには復興支援への感謝の気持ちや、アスリートへの応援メッセージが刻まれ、多くのアスリートに見てもらうことで世界へと発信。大会終了後には岩手県、宮城県、福島県の3県にそれぞれ設置されます。モニュメント制作は2020年9月、最終段階となるプレートの取り付けなどが行われました。完成に近づきつつある中、学生たちがこの制作に懸ける思いに迫りました。

被災地の思いをこめた 東京2020 復興のモニュメント
05:29

モニュメントで被災地と世界をつなぐ

「東京2020 復興のモニュメント」のコンセプトは、被災地から世界に向けて、支援に対する感謝や東京2020大会に挑むアスリートへの応援の気持ちを伝えること、同時に世界からは応援への感謝や、スポーツの力、感動を届けて被災地を元気づけることです。

2mを超えるモニュメントの素材には、東北被災三県で使用されていた仮設住宅の窓、サッシからの再生アルミを使用。「元気をありがとう」や、三陸地方の方言で「ともにがんばろう」を意味する「頑張っぺし」など、プレートに刻まれたメッセージは、東北3県の中学生・高校生によるものです。大会後にはアスリートからのメッセージも加わり、モニュメントは、最終的に被災地で「レガシー」として継承されます。

モニュメントに取り付けられるプレート
モニュメントに取り付けられるプレート

モニュメントは、岩手県と宮城県の「ダイヤ」型が二体、福島県の「顔はめ」型が一体作られています。デザインは東京藝術大学の学生たちが考案。2019年夏に東北3県でワークショップを行い、中学生・高校生による投票で各県のモニュメントが選ばれました。

デザインを考えたのは、ともに4年生の岡つくしさんと福井汐音さんです。岡さんが「顔はめ」型を、そして福井さんが「ダイヤ」型をデザインしました。2人は「今まで経験したことのないような大きな出来事に関わらせていただいているんだなと感動しました」(岡さん)、「やっとの思いでできたなという印象です」(福井さん)とそれぞれ感慨深げに話します。

「顔はめ」と「ダイヤ」、それぞれに込めた思い

岡さんがデザインした「顔はめ」型は、上部中央付近に穴が開いており、そこから顔を出せるのが特徴。観光地などに置いてある顔はめパネルをヒントに生み出されました。岡さん自身もこのパネルが好きで、顔をはめて楽しむとのこと。そこにはこんな思いがあります。

「普段なれない自分になれるものと言いますか、そのパネルの中に一体化できるというのが、すごくいいところだと思います。皆さんもこのモニュメントで、(本体に散りばめられた)応援メッセージと一体化して、選手や被災地への応援に一丸となってもらえればと思います」

「顔はめ」型をデザインした岡つくしさん
「顔はめ」型をデザインした岡つくしさん

福井さんの「ダイヤ」型は、たくさんの面があるデザインを思い浮かべたとき、「ダイヤっぽいかも」とその形がひらめいたそうです。またコンセプトとしても、被災地からのメッセージを散りばめたモニュメントが、「みんなの目に入るようなキラキラとした存在になれば」という思いを込めました。そんな福井さんのデザインは岩手と宮城2県で選ばれました。

「(選ばれたときは)びっくりしました。1県目で選ばれたときは『あっ選んでくれた』というすごい喜びがあったんですけど、2県目のときは『2個もいいんですか』みたいな驚きがありました。それだけたくさんの高校生たちから、トップに選んでもらえたということで、最後まで責任を持ってやりたいなという気持ちになりました」

「ダイヤ」型をデザインした福井汐音さん
「ダイヤ」型をデザインした福井汐音さん

ワークショップ時点では平面図でのデザインのみだったモニュメントですが、実際の形にするために立体化する作業が必要です。2人ともこの部分が制作過程の中で大変だったそうで、福井さんは「平面で見たイメージと、立体に起こしたときのもので差ができてしまいました。そこを置き換える作業にかなり苦戦しました」と振り返ります。

岡さんはそんな課題に対して、想像することを大切にし、解決策を探りました。「置かれたときに、見てくださった方が写真を撮るところをイメージしました。また私がよく(パネルに顔を)はめるので、そういうときに改善点などをいつも考えていました」。

2019年、福島県で行われたワークショップの様子
2019年、福島県で行われたワークショップの様子

忘れられない東北3県訪問

制作期間において、ターニングポイントとなったのが、東北3県で行われたワークショップです。その合間には、被災物を展示している気仙沼の美術館や、陸前高田の被災したアパートを見学しました。被災地の人々と関わり、その思いに触れたことで気持ちに変化が起こったと福井さんは言います。

「初めて東北に行く前までは、多くの人が被害を受けた大災害ではあるものの、心のどこかで自分には関係ないんじゃないかという、少し『蚊帳の外』のような気持ちがありました。しかし実際に行き、様々な人と関わることで、心が近づいたような気がしました。そしてこのモニュメント制作という形で、少しでも力になれればという気持ちに変わっていきました」

岡さんは特に、ワークショップで目にした中学生・高校生の姿が印象に残ったそうです。「気持ちを伝えようと一生懸命、細かい柄や形をみんなで相談して決めているのを見て、本当に感謝しているんだなという気持ちが伝わってきました。作業をしていても、必ず現地の子どもたちの顔や、話していたことが浮かんできます」。

モニュメントにプレートを取り付ける学生ら
モニュメントにプレートを取り付ける学生ら

大会で展示、「一生の思い出」「ちょっとドキドキ」

現在4年生の2人は2021年春に大学を卒業し、今とは異なる立場で本番を迎えることになります。社会人となる岡さんは、「大学生活最後の集大成というか、全世界から注目されるものなので、(関わることができて)本当に光栄だなと思います。一生の思い出になります」と、誇らしげに話しました。

モニュメントが展示される姿を想像すると「ちょっとドキドキしますね」という福井さんは、見た人に対して、こんなことを願います。

「大災害が起きてしまったということは、時代とともに風化してしまうかもしれません。だからこそ、(モニュメントを通じ)大変なことがあったということを、少しでもみんなに思い出してもらえるような、きっかけになってくれたらと思います」。

「東京2020 復興のモニュメント」は2021年夏、世界に向けてお披露目のときを迎えます。