5人制サッカーは「創造的で自由だ」 丹羽海斗がハマった競技の魅力

Niwa Kaito_01

パラスポーツは、1度見たらきっとハマる! オリンピック競技と異なる見どころも多く、注目度は年々増している。選手が考える競技の魅力とは? やっていて楽しいと感じるときは? 5人制サッカー日本代表候補の丹羽海斗は、18歳まで視覚障がい者の野球「グランドソフトボール」の選手だった。そんな彼がなぜ5人制サッカーに心奪われ、「ハマった」のか。

野球選手からの転向、最初は戸惑いも

5人制サッカーは「ブラインドサッカー」としても知られるように、視覚障がいのある選手(B1クラス)を対象とする競技。4人のフィールドプレーヤーと、ゴールキーパー(GK)でチームは構成される。GKは晴眼(視覚障がいがない人)、もしくは弱視の選手が務め、フィールドプレーヤーは視覚障がいのある選手でなければならない。

今年10月で23歳になる丹羽が、5人制サッカーに出会ったのは18歳のときだ。当時はグランドソフトボールをやっていたが、全国大会がなくなり、チームの存続が難しくなってしまった。そんなとき現在も所属する5人制サッカーのチームから「一緒にやらないか」と誘われた。

「5人制サッカーはこれまで縁のないスポーツだったんですけど、このまま何もやらなくなるのは嫌だなと思っていました。何でもやってみたい性分の人間ですし、声をかけていただいたのもうれしかったので、『これは良い機会だから挑戦してみよう』と思ったんです」

もっとも、これまでプレーしていたグランドソフトボールとは勝手が違った。サッカーだから当然、ボールを手で扱えない。「投げる・打つ」から「蹴る」という変化には戸惑いしかなかった。「本当にめちゃくちゃ難しかったです。最初はしばらく試合に出ても『自分にボールを回さないでくれよ』という感じでした」と笑う。

「投げる・打つ」から「蹴る」の変化に最初は戸惑いしかなかったという丹羽
「投げる・打つ」から「蹴る」の変化に最初は戸惑いしかなかったという丹羽
提供:日本ブラインドサッカー協会

長所を生かし、守備的な役割を担う

ただ、競技を始めて1年が経つころには、試合や練習で経験を積んだことで、技術が上がり、基本的な動きが分かるようになってきた。

「例えば味方が高い位置までドリブルでボールを運んでいったら、後ろからフォローに入る、あるいは逆サイドでパスをもらうためにスペースに走る。そういう意識ができてくると、目的を持って行動しますよね。始めたころは『ゴールに向かって味方にパスをしなければ』という感じだったのが、『あの人がボールを持っているから、僕はこちらに動こう』という細かい目標を設定し、仲間とコミュニケーションを取りながらプレーできるようになった。それが楽しさにつながってきました」

5人制サッカーにおけるオーソドックスなフォーメーションは、GKを除いて後ろから1-1-2か1-2-1。丹羽は守備的な役割を担うことが多く、1-1-2だったら真ん中の「1」に、1-2-1だったら「2」の左右どちらかにポジションを取る。163cm、55kgと小柄な丹羽は体格面でやや不利に思えるが、それを補う特性がある。

「自分の中で一番のストロングポイントは、ボールの音に対する反応です。1対1で相手を止めるというより、チームとして組織的に守る方が得意で、味方がマークに行き、相手がパスを出したところ、音への反応の良さを生かしてインターセプトをする。相手が何を狙っているか考えながら、駆け引きをして守備をすることも楽しさの1つです」

ボールの音に対する反応という長所を生かし、守備的な役割を担う
ボールの音に対する反応という長所を生かし、守備的な役割を担う
提供:日本ブラインドサッカー協会

求められる「音を聞き分け、状況を判断する力」

5人制サッカーでは、個々の見え方による優劣をなくすために、フィールドプレーヤーにはアイマスク着用の義務がある。ボールの中には鉛が仕込まれており、転がると音が鳴る。チームには、フィールドプレーヤーの目の代わりとなる「ガイド」と呼ばれるメンバーがいて、相手のゴール裏から、ゴールの位置などの情報を声で伝える役割を担う。また守備に関しての情報はGKが与え、監督が中盤の選手に指示を出す。つまり、5人制サッカーにおいてはボールを扱う技術と同様に、「音を聞き分け、状況を判断する力」が必要になってくるのだ。

「ボールの音、味方や相手から同時に飛び交う声。試合中は本当に様々な情報が飛び交います。それを聞いて瞬時に判断する力、頭の体力というのはすごく大事になってきます」

守備をする際には、ボールホルダーとの不意な衝突を避けるために、「ボイ」と声をかけるルールがある。攻撃側はその声を聞いたら「このまま進むとぶつかる」と考え、その場で止まるなり、切り返して別の方向に進んだりする一方で、選手によっては接触をうまくかわしていくシーンも見受けられる。守備側は相手をゴール前に入らせたくないため、中央から「ボイ」と言い、スペースを消そうと試みる。これも1つの駆け引きだ。

また攻撃においても、例えばドリブルでボールを運ぶ際、選手は音に反応するため、それに沿った動きをする。右サイドを速いドリブルで駆け上がれば、その速度に伴ってボールの音が鳴り、守備側はそちらに寄る。すると中央や逆サイドは空くため、味方がそこを突く。ドリブルで突破を図る際には、緩急の変化も有効。一度ボールを止めれば音がやみ、再び加速すれば相手は付いていくのが難しくなる。こうした音から得られる情報を頼りに状況を判断し、視覚以外の感覚を駆使するところに、競技の奥深さがあるのだ。

視覚以外の感覚を駆使するところに競技の奥深さがある
視覚以外の感覚を駆使するところに競技の奥深さがある
提供:日本ブラインドサッカー協会

自分たちのサッカーを作り上げていく楽しみ

先天性の全盲である丹羽は、物を見た記憶がない。物心がついたころから音の世界で生きてきた。通常、プレーのイメージを膨らませるには見ることが1つの方法だが、丹羽はそれができない。

「だから僕は、他の選手に実際にその場でプレーしてもらってその音を記憶したり、プレーしている選手に触らせてもらったりします。例えばインフロントキックでパスを出すときは、靴のどのあたりで、ボールのどこを蹴り、どれくらい足を振り切るのか。そういう体の動きを触らせてもらい、様々な情報をインプットして、自分のイメージに落とし込みます」

そんな丹羽が5人制サッカーという競技に魅了されたのは「世界と戦えること、創造性豊かなスポーツであること」が大きな理由だった。

「5人制サッカーは多くの国で行われているので、世界の選手たちと戦えるというのは大きな魅力だと思っています。そして、ボールを中心に仲間とコミュニケーションを取りながら、縦40m×横20mのピッチを走り、自分たちならではのサッカーを作り上げていく楽しみがある。もちろんチームありきですが、縛られない自由なプレーができる創造性豊かなスポーツであることが、5人制サッカーの醍醐味だと思っています」

1年延期となった東京2020パラリンピックに向けては、まず日本代表のメンバー入りを目指す。その上で「出場できたら、これまでお世話になった方々に恩返しできるようなプレーをしたいし、自分たちのサッカーをきっかけに、見ている方が『自分も何か頑張ってみよう』という勇気を与えられるプレーをしたいです」と意気込む。パラリンピックのピッチに立つことは丹羽の夢。日本代表のホープはその夢に向かって、これからもボールを追い続ける。

One Minute, One Sport 5人制サッカー
01:23

ハマった競技の魅力

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