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パラリンピック観戦チケット申込は1月29日まで! 車いすユーザーの東京2020組織委員会職員が取り組む、安心して観戦できる大会づくり
左から犬島朋子さん、白井長興さん、志村裕子さん
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、東京2020パラリンピック観戦チケット2次抽選の申し込みを2020年1月15日(水)から開始しました(1月29日(水)まで)。
今回は、自身が車いすユーザーである東京2020組織委員会職員へのインタビューを通じて、東京2020大会を観戦する際の注意事項や、障がいのある人たちが観戦しやすい大会づくりに向けた取り組みなどについてお伝えします。
過去大会に行ってみたら......「思わず涙が出た」
「リオデジャネイロ2016大会へ視察に行くことが決まった時、治安や政治の混乱、バリアフリーの状況など、現地の報道を聞く限り正直不安だった。けれど、行ってみたらボランティアの皆さんが気持ちよく接してくれて、不安はほとんど感じなかった。今までの概念が覆された」
そう語るのは、東京2020組織委員会のパラリンピック統括室で働く犬島朋子さん。犬島さんは10年ほど前にギラン・バレー症候群の後遺症で車いすユーザーになりました。現在は、パラリンピックの大会計画を統括する部署で働いています。
「旅行などで様々な場所へ出かけることが趣味」と語る犬島さんは、車いすユーザーになってからというもの、遠くに外出することを諦めてしまうことが増えたそうです。東京2020組織委員会で働くようになって、リオデジャネイロ2016大会へ視察に行くことが決まった時も、「車いすということで、何かとトラブルがあるのでは?と正直不安があった」と言います。
リオ2016大会のオリンピックパーク
平昌2018大会会場の車いす席
しかし大会期間中のリオで犬島さんが見たものは、想像と全く違ったものでした。
「リオには世界中から車いすの選手が集まっており、観客だけでなく、ただそこに遊びに来たベビーカーの家族連れまで様々な人が大会を楽しんでいました。こんなにも多くの車いすユーザーを目にしたのは初めての体験で、オリンピック・パラリンピック独特の祝祭感が街全体を覆っていたこともあり、その雰囲気にとてもワクワクしました」
すっかりパラリンピックの雰囲気に魅了された犬島さんは、続いて平昌2018大会にも視察に行った際は、リオ2016大会へ行った経験から、安心して出かけることができたそうです。期待通り韓国に着いてから会場までストレスなく到着することができ、車いすではなかなか行けない雪山の会場に行けた時は思わず涙が出たと言います。
「オリンピック・パラリンピックの祝祭感はこれまで体験したことのない特別のものです。実際に会場に行って生の試合を観戦して、とても感動しました」
東京2020大会に行くためには......事前準備が大切
「車いすユーザーに限らず、出かける前に様々な準備をし、環境が整っていなければ出かけることに困難を感じる人は少なくありません。私の場合は目的地だけでなく、宿泊先や経路のエレベーターなどの設備や段差情報などを集めて、初めて安心して出かけることができます」
そう語るのは25年前の事故で、脊髄を損傷した白井長興さん。現在は東京2020組織委員会の広報局で働いている車いすユーザーの職員の一人で、元職である訪問介護事業所で、自身だけでなく、多くの車いすユーザーの方とともに積極的に会場でのスポーツ観戦を行ってきました。その経験から、車いすユーザーが会場を観戦するにはいくつかの確認事項があるといいます。
「スポーツ観戦やイベントに出かける時は、まず(1)車いす席を購入し、(2)多機能トイレのある宿泊先を探します。そして(3)電車やバスの乗り継ぎを確認します。(4)駅から会場までのルートに坂や段差はないかも確認し、最後に(5)会場のアクセシビリティ情報を調べます」
つまり、これを東京2020大会の観戦に置き換えると、以下のようになると言います。
(1)パラリンピックチケットの車いす席を購入
(2)バリアフリー情報が載っているホテル検索サイトやアプリで、ホテルを探し予約
(3)利用する電車や路線バスを公共交通機関の公式サイトで調べる
(4)最寄駅~会場周辺のアクセシビリティ情報を調べる
(5)会場内のアクセシビリティ情報を調べる
「東京2020大会では、近年の大会以上に多くの方が安心して会場に来場できるように、そして生で観戦できるように、国際パラリンピック委員会をはじめ様々な団体とも協議を重ねながら、車いす席やその他配慮が必要な方向けの対応も準備を進めています。とはいえ、公式サイトなどでアクセシビリティなどの情報を出していくので、なるべく事前に確認いただけると嬉しいです」(白井さん)
東京2020大会の観戦チケットは、公式チケット販売サイトを通じて申し込みを受け付けています。観戦チケットを早い段階で申し込むことで、ホテルや交通手段、アクセシビリティの確認など、観戦に必要な情報を、ゆとりをもってご準備いただけます。東京2020パラリンピック観戦チケットは1月29日(水)11:59が締め切りですので、お早めに申し込んでいただくことをお勧めします。車いすユーザーの方は、同伴者1名まで一緒に観戦いただけますので、ぜひご活用ください。
整備は作り手の想いと共に、東京2020大会の会場に行ってみたら......
「初めて行く場所では、この先は行けるのだろうかと悩み、いざ行ってみると階段があって元の道に戻ることがあります。東京2020大会は既存の施設が23会場あり、アクセシビリティの整備が難しい会場もある。そんな中でもベストの状態にしていくことが私の仕事です」
そう語るのは、パラリンピック統括室で働く志村裕子さん。志村さんは交通事故で脊髄を損傷し、車いすユーザーとなりました。現在は会場のアクセシビリティや選手、観客、関係者などの動線確認の仕事に従事しています。
オリンピックスタジアム(実施競技:開会式・閉会式、陸上競技など)
志村さんは、昨年完成したオリンピックスタジアムも、完成直後に会場に行き、車いす席や多機能トイレ、売店などを確認しました。
いずれも車いすユーザーも使いやすく、売店などのカウンターが低く設定されており、色々配慮されているなと感じたそうです。
志村さんは、これまで多くの会場の視察を重ねる中で、障がいのある方が不便のないよう会場の施設面を充実させることはもちろんですが、それと同じくらい重要なこととして受け入れ側の思いがあるのではないか、と言います。
オリンピックスタジアム
馬事公苑(実施競技:馬術)
「馬事公苑の会場所有者様から伺った、「大会が終わった後もレガシーとして車いすの方などが、一人で来て一人で自由に散歩ができるような作りとしたい」との言葉が印象に残っています。既存の施設では、整備が可能な範囲も限られることもあり、新設会場ほど整えることが難しいこともありますが、整備は作り手の想いと共に進んでいます」(志村さん)
馬事公苑会場周辺のイメージ
快適な環境づくりをすることが私たちの使命
車いすユーザーに限らず障がいがあるなどの理由で、会場に観戦に行くことをためらっている方、もしくはそのような友人がいる方も少なくないかもしれません。犬島さん、白井さん、志村さんは「障がいのある方の中には、重症度によって外に出ること自体、二の足を踏むことも少なくありません。観戦により快適な環境づくりをすることが私たちの使命です。それは私たち3人だけではなく、組織委員会の中で働く障がいのある職員全員が当事者として考え、それを協力してくれる仲間と共に作り上げていくことが大切です」と話します。
車いすユーザーの3人にも、それぞれ大会に対する思いがあります。
犬島さん
「出かけてみたらさまざまな配慮が行き届いていて楽しく観戦できた、そんな大会としていきたいです。全世界が熱狂するイベントでもあります。行けるから、行ってみてほしい」
志村さん
「会場は、「そこにいる人みんな友達」になると思います。多種多様な人とスポーツを共に観戦しながら一体感を感じてください」
白井さん
「終わった時に来て良かった、大会が終わった後もずっと記憶に残るような、そんな気持ちの良い空気があふれる空間としていきたいと思っています。ぜひ、障がいのある方も観戦にお越しください」
東京2020大会は、3つの基本コンセプトの一つとして、多様性と調和を挙げています。人種、性別、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合う大会を実現するためにも、会場で誰もが安心して観戦できる環境整備は欠かせない要素の一つです。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催まで、あと6カ月。たくさんの方に会場で観戦していただけるよう、今後も東京2020組織委員会は準備を進めてまいります。