タックルが許されたパラ競技「車いすラグビー」響き渡る衝突音と会場の一体感を肌で感じよう!

タックルが許されたパラ競技「車いすラグビー」響き渡る衝突音と会場の一体感を肌で感じよう!

2019年9月20日~11月2日の1カ月半にわたって開催された「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。
日本代表は、チームスローガン「ONE TEAM」のもと、史上初の決勝トーナメント進出を果たし、国内外の多くの人々を感動の渦に巻き込みました。
ラグビー熱が盛り上がりをみせていた10月16日~20日の間、「もう一つのラグビーワールドカップ」と銘打って行われていたのが「車いすラグビーワールドチャレンジ」(WWRC)です。
会場となった東京体育館には、ラグビー日本代表が着用する桜のジャージを着て応援する観客の姿も見受けられ、日を追うごとに観客席からの応援も増していきました。

車いすラグビー日本代表(写真はリオデジャネイロ2016パラリンピックのもの)

「ONE TEAM」「ノーサイド」の精神は「車いすラグビー」にも!

「車いすラグビー」とは四肢に麻痺などの障がいのある人たちのために考案されたスポーツで、8分(1ピリオド)×4回を1試合とし、その合計点を競い合います。
選手には、それぞれ障がいの程度によって持ち点があり、障がいの軽い選手と重い選手とがそれぞれの役割を果たしながら、ラグビーと同じく「ONE TEAM」でトライ(得点)を狙います。
車いすラグビー日本代表は、リオデジャネイロ2016パラリンピックで、史上初のメダル(銅)を獲得。
2017年にはさらなる高みを目指し、カナダ代表やアメリカ代表をメダル獲得に導いたケビン・オアー氏をHCに招き、強化をはかってきました。
すると、2018年の世界選手権では初優勝。
現在は世界ランキング3位(2019年10月29日現在)となり、世界トップの仲間入りを果たしています。
だからこそ、東京2020パラリンピックでは、金メダルの最有力候補として期待を寄せられている競技なのです。

実は、「ONE TEAM」の精神だけでなく、「ノーサイド」の精神もラグビーと同じ。
試合中は激しくぶつかり合い、互いにトライを狙いに行く選手たちも、試合終了後には相手チームと笑顔で健闘を称え合い、お互いを「ラグビー・ファミリーの一人」として認め合います。
またサポーターも、相手チームの選手が観客席に近づくと笑顔で声をかけて健闘を称え、握手を求めていたりもしました。

ラグビー日本代表との共通点は、「ONE TEAM」「ノーサイド」といった精神面に限ってはいません。プレー自体にも同じような魅力がたっぷりと詰め込まれています。

たとえば、ラグビーワールドカップで日本代表が得意とした「オフロードパス」。倒れながらも、味方が走ってきていることを信じてパスを出すプレーですが、実は「車いすラグビーワールドチャレンジ」(WWRC)でも同じようなシーンがありました。

強烈なタックルを受けて転倒する寸前、相手の守備をかいくぐって走ってきた味方にパス。これが貴重な得点へとつながり、日本は接戦をモノにしました。「車いす」を駆使し戦う選手たちにとって、実は360度周りを見渡すのはすごく難しいこと。そんな中、後方や斜めから来た味方を信じパスを投げるのは、チームのメンバーへのゆるぎない信頼と技術力の結晶ともいえます。

裏方で支えるスタッフを含めた「ONE TEAM」で目指す東京2020パラリンピック

今では世界トップの仲間入りを果たした日本代表の強さは、「多様性」のある「チームワーク」。障がいの種類も程度も異なる中、それぞれの特徴を活かした強みを引き出し、それを認め合い、信頼し合うことでチーム力が生まれます。
「(海外勢と)フィジカルの差は確かにあって、そこに追いつく努力は必要。ただ、自分たちの強みをいかした日本らしいラグビーで勝つことができる」とエース池崎大輔選手が語るように、個々の体格では勝てない海外勢にも、日本は「ONE TEAM」で挑み、勝機を見出してきました。

池崎大輔選手

また、チームは指揮官や選手たちだけではありません。さまざまな役割を果たすスタッフの存在も不可欠です。
中でも、車いす同士が激しく衝突し、試合中に何度もパンクなどの「トラブル」が起こる車いすラグビーでは、メカニックの存在は欠かすことができません。

メカニックは試合前後には、試合中に選手たちのプレーに支障があるようなトラブルが起きないよう、一つ一つ丁寧に「ラグ車」 (競技用車いすの通称)をチェックし、少しでも亀裂があったり曲がっていたりすれば、すぐに修理を行います。
また、試合中もパンクが起こるたびにタイヤ交換に走り、ベンチに戻ってくるとすぐに修理を行い、次に備えるのです。
多い時には1試合で20回ほどパンクが起こるため、迅速な対応が必要となります。

4年前のリオデジャネイロ2016パラリンピックでタイヤのパンクを直すメカニックの三山慧さん

2008年北京パラリンピックの時から日本代表のメカニックを務めている三山慧さんは、自身の役割をこう語ります。
「メカニックがいたからって勝てるわけではないんです。でも、車いすのトラブルによって勝敗が決まるというようなことは、決してあってはならない。僕たちはそれを回避させ、選手たちが実力を出し切れるステージを整えることが最大の役割だと思っています」
日本代表は、こうした裏方として支えるスタッフとともに「ONE TEAM」で、東京2020パラリンピックでの、初の金メダルを目指して日々練習を重ねています。

会場に響く衝撃や迫力、会場を包む熱気と一体感は"生観戦"だからこそ!

今回のWRCCでは、その東京2020パラリンピックの盛り上がりを想起させるほど、会場中が熱気に包まれました。
車いすラグビーを初めて観戦すると、まず衝撃を受けるのが、タックル時の衝突音。
「ドーン!」「ガシャーン!」という激しい音が会場中に鳴り響きわたります。
さらに、激しく衝突し合うたびに、重厚感たっぷりの「ラグ車」が跳ね上がるのです。
これは車いすを使ったパラリンピック競技の中でも、唯一車いすでのタックルが許された「車いすラグビー」の会場でしか味わうことのできない魅力の一つ。

激しくぶつかり合う選手

そんな衝突の激しさが一目でわかる光景に、会場は熱気と緊張感に包まれていきます。
また、車いすをまるで体の一部のように自在に操り、ぴたっと車いすの動きを止める「ストップ」と、すぐに走り出す「ゴー」を繰り返す選手たちの機敏な動きに、選手たちが四肢に障がいがあることを、ついつい忘れてしまいます。

その会場で、同じような障がいを持ちながら車いすで観戦していた方は、「手に麻痺があると、車いすをうまく操作することさえも難しいのに、選手たちはいとも簡単そうにピタッと止まったりしていて、本当にすごいなと。これこそ、厳しい練習の賜物だと思う」と目の前で観戦した思いを話してくれました。

会場では、積み上げてきた練習の成果を存分に発揮し、劣勢の場面でも決して諦めることなく勝利を目指して戦い続ける日本チームの姿に、会場のスタンドからは次々と声援が飛び交いました。
そして、少しでも後押ししようと拍手を送る「ファン」の姿は日に日に増え続け、チームと観客の間にはいつの間にか一体感が生まれました。
それは「生観戦」だからこそ味わえた特別な空気でした。

ONE TEAMで金メダルを目指す日本代表

やはりスポーツの醍醐味は「生観戦」にあり!

ぜひ、東京2020パラリンピックでは会場で、車いすラグビーの迫力を肌で感じ、選手とファンの一体感を味わってください!