水球

Photo by Ryan Pierse/Getty Images
Photo by Ryan Pierse/Getty Images

鋼の肉体がぶつかり合う水中の格闘技

激しいゲームの中で、各国の緻密な戦略が光る

競技紹介アニメーション「One Minute, One Sport」

水球のルールや見どころを1分間の手書きアニメーション動画でご紹介します。水球に詳しい人も、そうでない人も、まずは動画をチェック!

One Minute, One Sport 水球
01:24

競技概要

水深2メートル以上のプール内につくられた縦30メートル横20メートルのコートで、2チームがボールをゴールに投げ入れ合って得点を競う水中の球技。ゴールキーパーを含めた1チーム7人の選手たちは、試合中一度も底に脚をつけずにプレーする。攻撃開始から30秒以内にシュートまで持ち込まなければならないというルールがあり、それを過ぎると攻撃権は相手に移る。試合時間は4ピリオド制(1ピリオドは8分間)。プールで行われる唯一の球技種目だ。

1860年代のイギリスで「ボールを決められた水上のポイントまで運び合うゲーム」として始まり、そのあまりの荒々しさから危険を防ぐためにルールが制定され、スポーツとしての水球が確立したとされている。オリンピックでは、男子はパリ1900大会から、女子はシドニー2000大会から行われている。

種目

  • 水球(男子/女子)
Photo by Phil Walter/Getty Images
Photo by Phil Walter/Getty Images
2016 Getty Images

競技の魅力、見どころを紹介

水中でありながらスピード感あふれる展開 激しい肉体のぶつかりあいは迫力満点

鍛え上げられた大きな体がプール内を縦横無尽に行き交い、激しくぶつかり合う。審判から見えにくい水中では、相手をつかみ、蹴り上げるといったプレーが少なくない。ボールを持っていない選手に対してこれを行うとファウルになるが、ボールを持っている選手に対しては、荒々しいコンタクトが許されている。この激しさから「水中の格闘技」と称され、さらにスピーディーなゲーム性を兼ね備えたスポーツでもあり、ゴール前を固めるゾーンディフェンスや、素早いカウンターアタックなど多彩な戦術も魅力の一つだ。

ゴールキーパー以外の選手は、ボールを片手で扱うことが定められている。1チーム7人であることや手を使ってボールをゴールに投げ入れること、選手交代の回数が自由であることから、ルールはハンドボールに似ているともいわれる。ゴール前、選手たちが軽々とボールを扱い、華麗なパスワークでディフェンスのフォーメーションを崩す場面などは、目を見張るものがある。

水球はファウルが多いことも特徴の一つで、それが得点を左右する重要なポイントにもなる。ファウルは、オーディナリーファウルとパーソナルファウルの2種類があり、前者は軽微な反則と見なされ攻撃権は移らない。一方、パーソナルファウルをした選手は自軍ゴール横にある「退水ゾーン」で20秒間の待機が命じられる。その場合は相手チームよりも1人少ない状態でのディフェンスを強いられるため、失点につながりやすい。

選手はプールの底に足をつけず、身体を水中で垂直に維持しながらプレーする。それを可能にするのが、巻き足と手の平の動作で生まれる「揚力」だ。相手のディフェンスを超えてシュートを打つときは、体をコントロールし、浮力をつくる「スカーリング技術」を合わせることで、瞬間的に上半身を思い切り高く水上に持ち上げる。片手でボールをつかんだ状態でジャンプし、全身の力を利用して打つシュートは、男子では時速70キロメートル程度、女子は時速50キロメートルを超える。この豪快なシーンも、水球の大きな見どころのひとつだ。

東京2020大会に向けた展望

パワープレーからスピードプレーへとルール変更が勢力図の変化をもたらすか

イギリスを発祥の地とし、ヨーロッパを中心に普及が進んだこともあり、男子はヨーロッパの各国・地域がオリンピックのメダルの多くを獲得している。なかでも国内にプロリーグを有するハンガリーは、シドニー2000大会から北京2008大会までの3連覇を含め、金メダル数は合計9個を数える。ロンドン2012大会ではクロアチアが、リオデジャネイロ2016大会ではセルビアが金メダルを獲得するなど、国内で絶大な人気を集める旧ユーゴスラビア圏の国々の実力が拮抗している。金3個、銀2個、銅3個の実績を持つイタリアもメダル常連国だ。

一方女子は、シドニー2000大会から正式種目となったこともあり、自国開催で強化に力を入れたオーストラリアがその大会で優勝。オリンピックデベロップメントプログラムを導入し、選手発掘と強化を継続的に進めているアメリカが、ロンドン2012大会、リオデジャネイロ2016大会で連覇を達成している。この2か国以外では、北京2008大会でオランダが、アテネ2004大会でイタリアが、金メダルを獲得している。

男女とも強豪国に共通しているのは、大きな体格、長い手足を利用した戦術、戦略である。攻撃時間の30秒をじっくり有効に使い、センターポジションの選手にボールを集めてゴールを奪う攻撃パターンが王道だ。素早いパス回しからディフェンスの隙を突いて、ロングシュートを豪快に打ち込むこともある。

水球をさらに世界的に発展させていくためには、泳力を生かしたスピーディーな攻撃が得意な国や「パスラインディフェンス」というカウンターアタックのような戦術を実践する日本など、新たな勢力の台頭が待たれている。国際水泳連盟ではワールドリーグを開催して、さまざまなレベルの国が戦える機会を増やし、コーチやレフェリーの強化を国際的に図っていくなど、新たな動きを開始。従来の激しい格闘技的な要素を残しつつも、競技としての新たな魅力の可能性も押し広げていくために、より展開が早くなることを狙い、コートの長さや攻撃の時間を短縮するルール変更も予定されている。水球の戦術、戦略が今後どのように変わっていくかに注目したい。

<日本>
リオデジャネイロ2016大会で、32年ぶりのオリンピック出場を果たした男子の日本代表。その原動力となったのは、相手にパスをさせない守備で、ボールを奪ってカウンター攻撃をしかける 「パスラインディフェンス」という作戦だった。リオデジャネイロ2016大会では未勝利に終わったが、強豪国の高さとパワーに対抗して、スピードと持久力で勝負する日本独自の戦い方を強化し、自国開催のオリンピックで強豪相手に勝利するべく準備を進めている。東京2020大会で初出場初勝利を目指す女子は、24時間使用可能の練習プールを拠点とし、強化合宿を増やすことで底上げを図る。男女ともに海外でプレーする選手も増え、新たな日本の水球の歴史をつくることに意欲を燃やしている。

トリビア

(2020年3月24日現在)