19歳の上野優佳 オリンピックで必ずメダルを取る、そんな選手になりたい

初めてのオリンピック、東京2020大会で金メダル獲得を目指す19歳の上野優佳
初めてのオリンピック、東京2020大会で金メダル獲得を目指す19歳の上野優佳

フェンシング普及のために金メダルを

「太田会長が取れなかったオリンピックでの金メダルを自分は取りたいと思っています」

フェンシング界期待の19歳、上野優佳はきっぱりとそう言い切った。

太田会長とは、北京2008オリンピックのフェンシング・男子フルーレ個人で、日本人として初のメダル(銀メダル)を獲得した太田雄貴さんのことだ。フェンシングの知名度を上げたいと選手時代にはオリンピックでのメダル獲得に挑み、現在は日本フェンシング協会の会長として競技普及のために奔走する。そんな会長の姿を傍らで見ながら、同じフルーレでオリンピックを目指す上野もまた、思いをともにする。

「金メダルを取るだけでフェンシングが普及するとは思っていませんが、オリンピックでメダルを取らないと、そこから先のことが進まない。だからオリンピックでメダルを取りたいんです」と、そう続けた。

上野の強みはスピード。タイミングをずらし多様に攻める(写真は2019世界ジュニア選手権)
上野の強みはスピード。タイミングをずらし多様に攻める(写真は2019世界ジュニア選手権)
(c)FJE

兄に負けたくないと

上野はフェンシング一家に育った。両親は元選手、2歳年上の兄もフェンシングをしていた。そのため物心ついた頃には、自然とフェンシングを始めていた。

「小さい頃から父に、試合に勝てるようにと厳しく育てられてきました。自分の今のメンタルの強さや負けず嫌いな部分は父から学んだことだと思います」。兄の存在も上野の「負けず嫌い」を加速させた。「ずっと兄を目標にして、負けたくないと思ってやってきました。男子のようにスピードのあるフェンシングができるようになったのは兄のおかげです」。

「オリンピックに出たい」と思い始めたのは小学校の頃だ。ただ、初めは漠然と思っていただけだった。それでも、2013年9月に東京でオリンピックが開催されることが決まり、中学生になってシニアでも戦い始めると、その希望がだんだんと現実味を帯びてきた。

フェンシング日本代表が練習する味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の近くにキャンパスを持つ星槎国際高等学校への進学を誘われたことでも心が動かされた。上野は、いったんは兄が通う地元・大分の高校に進んだが、2年生になるタイミングで同校へ転校。北京2008大会の代表監督だった江村宏二氏の指導の下、本格的にオリンピックを目指し始めると、16歳となった2018年、世界ジュニア選手権(17歳以上20歳以下)、世界カデ選手権(13歳以上17歳以下)で優勝(編注:カデ区分の選手がジュニアの大会に参加することは可能)、ユースオリンピックでも金メダルを獲得した。太田会長も驚くほどの快挙だった。

2018年の世界ジュニア選手権で初優勝し、世界一に
2018年の世界ジュニア選手権で初優勝し、世界一に
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2018年は太田会長も驚く快挙。世界ジュニア・カデ、ユースオリンピックで金メダル(写真は世界ジュニア選手権)
2018年は太田会長も驚く快挙。世界ジュニア・カデ、ユースオリンピックで金メダル(写真は世界ジュニア選手権)
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そういった活躍が認められ、上野は、日本オリンピック委員会による「JOCシンボルアスリート・ネクストシンボルアスリート」に選ばれた。次世代の日本を代表する選手として、オリンピックにおいて活躍が期待され、オリンピズムの目的に賛同するアスリート。身が引き締まる思いがした。「トップレベルとして自分が思うような結果をもっと残していかなきゃいけない」と気持ちを新たにした。

強みのスピードに強弱をつけて

上野にとって初めての挑戦の舞台、東京2020オリンピックが近づいている。同じ「オリンピック」と名のつくユースオリンピックを経験し、他競技の選手との交流など、総合大会の楽しさも知った。

「オリンピックは、スポーツの中のトップの戦いで誰もが目標にするもの。出場するのは本当に難しいことだと思いますが、出られるチャンスがあるということで、そこに向けて今、必死に頑張っています」

大会の延期が決まってから意識しているのは、「自分の持っている技の精度をもっと上げたい」ということ。フルーレは背中を含む胴体が「有効面」、精度の高い剣さばきが重要になる。

「自分の得意なステップの部分やアタックを磨きながら、ちょっと苦手なディフェンスや、相手にカウンターに入られたときの対応などを特に練習しています」

強みはスピードだが、トップレベルになると速いだけでは相手に勝てない。ゆえに、攻めのスピードに強弱をつけようと試みている。「タイミングをずらして攻めるのは、しっかりできてきていると思います」と、自信をのぞかせた。

ステップを磨きながら、ディフェンスにも力を入れている(写真は2018世界ジュニア選手権)
ステップを磨きながら、ディフェンスにも力を入れている(写真は2018世界ジュニア選手権)
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フルーレの魅力はダイナミックな技

外国人選手と比べて、159cmと小柄な上野が、上背のある相手に勝つには、「とにかく相手よりも動いて、懐に入ることが一番のカギ」だと言う。「自分が足を止めてしまったら絶対に勝てない。だから、とにかく動いて相手を惑わせたいです」。そういった動きで参考にしているのは、イタリアのバレンチナ・ベッツァーリさんだ。アトランタ1996大会からロンドン2012大会まで5大会オリンピックに出場し、個人・団体合わせて金メダルを6個獲得したレジェンドである。

「身長は164cmでそんなに大きくないのにそれだけメダルを取れているということは、やっぱり彼女なりの強さがあるんだろうなって思うんです。そんなふうにオリンピック常連の選手、オリンピックで必ずメダルを取れるような選手に私もこれからなっていきたいと思います」

フェンシングにはやってみればよりわかる楽しさがあり、フルーレの魅力は「踏み込みの速さやダイナミックな技」だという。だからこそ、「一度経験してもらいたい。ぜひ見てほしいんです」と上野は言う。

「フェンシングを、女子フルーレを普及させるためにも、東京オリンピックでは個人戦、団体戦ともに強さを発揮して、絶対メダルを獲得したい。今はコロナ禍ですが、それを吹き飛ばして、日本を復活させられるような試合をしたいです」

19歳のフェンサーは、熱くそう語った。

東京を始まりにパリやその先へ、上野の挑戦は続く
東京を始まりにパリやその先へ、上野の挑戦は続く
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