飛込期待の14歳・玉井陸斗「注目されるのは自信になる」最年少記録を次々に更新

玉井陸斗(右)と寺内健
玉井陸斗(右)と寺内健

12歳で日本のトップに立った新星

「まず1つの目標としては、決勝に残ること。そしてそこまで行くことができたら、メダルを目指していきたいと思います」

飛込の10m高飛込で東京2020オリンピック出場を狙う玉井陸斗は、力強くそう言い切った。2006年9月11日生まれの14歳。この4月に中学3年生となった玉井は、数々の最年少記録を更新し続ける飛込界期待の新星だ。

玉井が脚光を浴びたのは、2019年4月に行われた日本室内選手権飛込競技大会の男子高飛込を制したことがきっかけだった。当時は中学校に入学したばかりで、12歳での優勝はもちろん史上最年少。同年7月の世界選手権は、「競技開催年の12月31日に14歳未満の選手は派遣できない」という国際水泳連盟の規定により、出場できなかったが、東京2020大会に向けた新たなホープとして、注目度は高まっていった。

もっとも当の本人からしてみれば、日本室内選手権の結果は、驚き以外の何ものでもなかったという。

「大会前は8位入賞できたらいいくらいだと思っていました。高飛込でも10mの試合に出ることがあまりなくて、自分としては完成度が低い状態だと思っていたんですけど、その中で大人の選手にも勝てる演技ができたのはよかったです」

この4月に中学3年生となった玉井は、数々の最年少記録を更新し続ける飛込界期待の新星だ
この4月に中学3年生となった玉井は、数々の最年少記録を更新し続ける飛込界期待の新星だ

寺内も絶賛するアスリートとしての姿勢

小学校1年生で飛込を始め、5年生で10m高飛込の試合に出場。そこで得た手応えから「いつか日本のトップになれるんじゃないか」と感じた。そのときからわずか2年ほどで、それを実現してしまったのは本人としても想定外だったようだが、この日本室内選手権での結果は、「大きな自信になった」という。

事実、2019年9月の日本選手権水泳競技大会では、男子高飛込で自己ベストの498.50をマークし、こちらも史上最年少優勝(13歳0カ月)。このスコアは同年の世界選手権で4位に相当するもので、まさに世界レベルの実力を見せつけた。さらに翌2020年9月の日本選手権でも、今度は男子3m飛板飛込で史上最年少優勝(14歳0カ月)を果たす。東京2020大会が延期されなければ、日本の男子選手としては、ロサンゼルス1934大会の北村久寿雄さん(競泳)の14歳10カ月4日を更新する、13歳10カ月での最年少出場も有力視されていた。

そんな玉井の強さは、技術もさることながら、そのアスリート思考にある。練習を共にする飛込界の第一人者である寺内健は、玉井をこう評する。

「彼は、技術はもちろん努力をしっかりできる天才で、頭もクレバーです。一番すごいのは、競技を始めたときから『世界チャンピオンになる』という目標を掲げ、それに向き合っていること。苦しいことにも涙をこらえ、奥歯をかみしめながら耐えてきた。練習量も多い。そういう姿は見ている人に刺激を与えますし、超トップアスリートだなと感じます」

演技の特徴は「空中姿勢の美しさ」。幼いころから体幹を鍛えることで、培われたものだ
演技の特徴は「空中姿勢の美しさ」。幼いころから体幹を鍛えることで、培われたものだ

「自分がするべきことをやり、期待に応えたい」

演技の特徴は「空中姿勢の美しさ」。高速で回転し、その回転をほどいたときに足のつま先がぴたりとそろう。支点がない空中で足を真っ直ぐにする姿勢を保つには、体幹の強さが必要となってくるが、玉井は肋木(ろうぼく)というはしご状の器具にぶら下がって行う肋木腹筋やV字腹筋、背筋といった筋力トレーニングを取り入れることで、体を鍛えてきた。

玉井が東京2020大会で出場を目指す男子10m高飛込は、違う演技を6回行い、その合計得点を競う種目だ。現在の自己ベストは528.80点。世界の舞台で表彰台を狙うには550点近くが必要で、玉井はこのスコアを1つの目標としている。そしてそれを達成するために、挑んでいるのが難易度の高い大技「109C(前宙返り4回転半抱え型)」だ。この技の完成度を高めること、さらにやや苦手とする「207B(後宙返り3回半エビ型)」や「307C(前逆宙返り3回半抱え型)」を安定させられるように練習を積んでいるという。

この1年で身長は10cmほど伸び、155cmとなった。現在も成長期で、「身長や体重によって、宙返りの重さも変わってくるので、筋力を上げながら自分で調整していく必要があると思っています」と、先を見据える。その成長に伴い、今後も自身に向けられる期待はさらに高まってくるだろう。それでも「最近は注目されていることが自信になってきています」と語る玉井は、あくまで自然体だ。

「まずは自分がするべきことをきちんとやっていきます。そして試合では何も考えずそれをできるようにして、期待に応えたいと思います。ずっと日本代表でいられるように頑張っていきたいです」

素顔はまだあどけない、負けず嫌いの14歳。注目されることを自信に変え、日本の飛込界をけん引していく。