東京2020ロボットプロジェクト通じ、「未来のスポーツ大会」見せる 比留川博久リーダー

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東京2020大会は、ロボット有識者のご協力のもと、国、東京都、トヨタ自動車やパナソニックといった大会パートナーとともに、イノベーティブな取り組みの一つとして、「東京2020ロボットプロジェクト」を行っています。ロボットが大会期間中に様々な場面で人々に寄り添い、役立つ姿を見せるとともに、大会を契機とした社会実装の推進に繋げることを目的とする同プロジェクト。ロボットは新型コロナウイルス感染症対策においても、感染防止策の一つである非接触に寄与する点で、注目を集めています。ロボット業界の現状、そして東京2020オリンピック・パラリンピックで見せたいロボット像とは。比留川博久プロジェクトリーダーは、「未来の姿を示したい」と力を込めます。

ロボット活用の場、広がる

比留川リーダーは現在、国立研究開発法人産業技術総合研究所で介護分野におけるロボットの活用や、ロボットによる自動配送などを研究。直近では、高齢者向けに転倒防止機能を持つロボット歩行車の開発に携わっています。また、「東京2020ロボットプロジェクト」ではリーダーとして、プロジェクト全体を統括する立場にあります。

日本のロボット業界において、製造業用に使われる「産業ロボット」は、約1兆円の市場規模を誇り、世界と比較してもトップクラスです。しかし、ものづくりの現場へのロボット導入が促進される一方、日常生活においての活用は今一歩遅れがちでした。その流れを変えたのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。感染を防ぐ手立てとされる「フィジカル・ディスタンス(物理的距離)」の実行には、ロボットの活用が有効な一手であり、活用の場は増えていると比留川リーダーは話します。

「エッセンシャルワーカー(日常生活において必要不可欠な仕事への従事者)の方が、新型コロナウイルス感染症にかかるケースもあります。例えば、ビル内の清掃や荷物の搬送といった作業をロボットがやっていく。また消毒を行うロボットもあります。遠隔作業についても効率は落ちますが、現地に行く必要がないことから、少しずつ実用例が出てきています」

2020年がロボット活用の契機になればと語る比留川リーダー
2020年がロボット活用の契機になればと語る比留川リーダー

2020年を「サービスロボット元年」に

さらに私たちの生活にとって身近な飲食店でも、ロボットが活躍し始めています。注文した食事を配膳し、席まで持ってきてくれるものや、皿洗いをしてくれるもの、最近では調理を行うロボットについても開発が進んでいます。「以前から『たこ焼きを焼く』といった様々な実験が行われましたが、その多くは実用化しませんでした。しかしカフェで出されるパスタなら、5種類くらいで、調理方法も決まっていることから『ロボットでできるのでは』ということで、トライアルが始まっています」。

このように主にサービス業で使われるロボットのことを、「サービスロボット」と呼び、その活躍の範囲は物流倉庫で配送作業を手助けするものや、家庭での掃除を行うものなど多岐に渡ります。「現在の市場規模が産業と言える1000億円規模になるかというと、微妙なところです。しかし、こういったロボットが使われ始めた2020年が『サービスロボット元年』として、契機になればいいですね」。比留川リーダーはさらなる発展に期待を寄せています。

競技大会における実用例として

東京2020大会でも、ロボットに活躍の場が用意されています。これまで「東京2020ロボットプロジェクト」では、様々な企画を発表してきました。車いすのお客様に対して、物品の運搬や観戦席への誘導を通じ、ストレスなく入退場・観戦できるようにサポートする「生活支援ロボット」。また東京2020マスコット、ミライトワとソメイティのロボットである「東京 2020 マスコットロボット」は、大会関連施設などで選手や観客を歓迎するほか、子どもたちが同ロボットを通じ、新たな形で大会を楽しめるよう企画しています。

自律走行機能を持つ「フィールド競技サポートロボット FSR」は、陸上競技の投てき種目の運営を支援。自ら最適な経路を選びながら進んで、槍やハンマーといった投てき物を回収し、時間短縮と運営スタッフの労力低減に寄与します。さらに、360度カメラとディスプレイを搭載する「遠隔地間コミュニケーションサポートロボット T-TR1」は、遠隔地にいる人が360度カメラからの映像を通じて、その場にいる感覚を味わうことができます。また、重たい物を運ぶ運営作業スタッフの負担軽減を目的に「パワーアシストスーツ」も活用します。

スポーツ界では、各競技の大会において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降、中止や無観客での開催が相次いでいます。そんな現状について、比留川リーダーは、「このプロジェクトが、大きなスポーツ大会でこのようにロボットを使えば、少しでも人と人との接触を減らせますよという事例になるのでは」と話します。

「そこには2つの意味があります。まずはスタジアムにいる人と、遠隔にいる人をいかに組み合わせて、楽しめる環境をつくるかという点。もう一つは裏方としてどうしても必要な運営スタッフがいますので、それを最小限の数に抑えられるかという点です。様々な企画を通じ、最適解をお見せできればと思います」

2021年夏の本番に向けて、1年延期された分、ブラッシュアップが進むロボット技術。比留川リーダーも「1段上のものが披露できるのではないでしょうか」と自信をのぞかせます。その上で、「本当にロボットが役に立つというところを示したいですね。『デモンストレーションをしていて、おもしろいね』ではなく、未来の姿を見せて、将来は『オリンピック・パラリンピックで見たロボットが身近になったね』と、言ってもらいたいです」。

「東京2020ロボットプロジェクト」を通じ、未来のスポーツ大会を感じてください。