東京2020大会と同一会場で行われた日本水泳連盟主催「ジャパンスイム2020」から見る競技会場の感染症対策 

東京アクアティクスセンターで初の水泳競技会として開催された「ジャパンスイム2020」
東京アクアティクスセンターで初の水泳競技会として開催された「ジャパンスイム2020」

2020年12月3日(木)から6日(日)の4日間、東京アクアティクスセンターにて、日本水泳連盟主催の第96回(2020年度)日本選手権水泳競技大会(ジャパンスイム2020)が行われました。

東京2020大会でも水泳競技の会場となっている東京アクアティクスセンターで開催された今大会では、どのようにして感染症対策が講じられたのか。主催・運営の日本水泳連盟でそれぞれ副会長と競技副委員長を務め、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)でも水泳競技の運営責任者である安部喜方氏、藤森克悦氏にお話を伺いました。

プロフィール

安部 喜方

公益財団法人日本水泳連盟 副会長

東京2020組織委員会 スポーツ局 競技運営部(ベイゾーン) スポーツマネージャー(水泳)

藤森 克悦

公益財団法人日本水泳連盟 競技副委員長

東京2020組織委員会 スポーツ局 競技運営部(ベイゾーン) 種別マネージャー(水泳<競泳>)

大会前・大会中・大会後における対策の徹底

日本水泳連盟では、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2020年4月以降すべての大会を中止・延期。2020年9月に飛込の日本選手権を開催し、徐々に大会活動を再開していますが、東京2020大会と同一会場の東京アクアティクスセンターで行われる初めての大会として、今回のジャパンスイム2020は開催されました。

安部氏「今大会では、日本水泳連盟が定めるガイドラインに加え、国際水泳連盟(FINA)が水泳競技会における感染防止策を定めたガイドラインや、東京都発行の感染防止対策チェックリスト・ガイドラインをもとに大会運営方針を決めていきました。また、無観客開催とするだけでなく、アスリートも含めた大会参加人数を大幅に削減することで、密を回避して行いました」

参加者に対しては、大会前・大会中・大会後のそれぞれにおいて対策を実施したといいます。

藤森氏「大会前の対策として、大会参加日からさかのぼって14日間の体温・体調の記録・提出を、アスリートを含むすべての大会参加者に義務付けました。今大会における感染症対策をまとめた要綱の事前周知も、注力して行ったことのひとつですね」

大会期間中は、会場内でのマスク着用、入場時の検温・消毒、施設・共有備品の抗菌化といった基本的な感染症対策のほか、感染者発生時を想定した隔離部屋を設けるなど、医療体制においても新型コロナウイルス対策を強化。また、アスリート・関係者・報道機関それぞれに会場入退場口を分けて設けることで動線管理を行うとともに、アスリートへの取材においては会場内別室を使用したリモート取材方式を導入し、アスリートとその他参加者の接触が最小限に抑えられました。

アスリートとの接触を制限しながら行われた取材の様子
アスリートとの接触を制限しながら行われた取材の様子
写真提供:日本水泳連盟

藤森氏「大会後の対策としては、大会終了後14日間にわたって大会参加者全員の体調不良・新型コロナウイルス感染症発症の把握、情報提供の義務付けを行っています」

このような事前・大会中・事後の対策によって、感染者およびクラスターを発生させることなく大会を行うことができたといえます。

徹底した感染症対策で東京2020大会に向けたシミュレーション

安部氏「今大会では、アスリートへの負担を軽減しながら、安心して大会に臨める環境づくりを重視しました」

特に、新型コロナウイルス感染拡大以降、密を避けるために禁止としていたトレーナー活動について、日本水泳連盟の医事委員会が検討を進め、今大会では条件付きで再開されました。

安部氏「トレーナー活動はアスリートのコンディション・競技力向上に寄与するため、アスリートにとって非常に重要です」

藤森氏「今大会では専用エリアを広く設け、エリア内入場人数を限定したうえで、マッサージ台は前後左右3mの距離を確保して配置しました。トレーナーにとっても密を回避した空間で、安心して活動ができたのではないでしょうか」

さらに、会場内の特に密になりやすい諸室には、通常の約4倍の風量で空気を清浄するフィルター機能を持つ空気清浄化ユニットが8カ所計11台設置されました。アスリート更衣室や控室などに設置して24時間稼働させ、10分ごとに空気中の微粒子を検知する微粒子測定計も使用することで、空気の状態をデータ化して把握していたといいます。

会場内8カ所に設置された空気清浄化ユニット
会場内8カ所に設置された空気清浄化ユニット
写真提供:日本水泳連盟

藤森氏「手指消毒はアルコール、施設や共有物に対しては抗菌溶剤を使用、飛沫感染対策としてはこの空気清浄ユニットと、それぞれの対策を徹底することで、大会期間中の会場内衛生に努めました」

安部氏「アスリートにとって今大会は、東京2020大会の競技シミュレーションの機会になっただけでなく、徹底した対策が講じられる中で安心して競技に臨むことができていたようです」

同一会場における大会運営から知見・課題を蓄積し、2021年の東京2020大会へ活かす

東京2020大会の開催にあたっては、さまざまな観点からの安全対策が必要です。今大会は無観客で行われたため、観客を入れた大会運営については今後も引き続き検討が必要となりますが、競技会場における安全対策については、実際にその会場でどのように大会が運営されたのかという視点を参考に、運営計画を検討していきます。

2021年春にも、東京アクアティクスセンターでは水泳競技会の開催を予定しています。感染状況やウイルスに関する知見が日々刻々と変化するうえ、それぞれの大会によっては運営条件が大きく異なりますが、2021年夏の東京2020大会本番時に必要となる対策のレベルに合わせて、対応できる「引き出し」を蓄積していくことが重要と考えています。

東京2020組織委員会は、今大会を含め、実際の大会運営から得られた知見・課題を踏まえて改良を重ね、東京2020大会の準備を進めていく所存です。

大会概要

名称:第96回(2020年度)日本選手権水泳競技大会 競泳競技

大会呼称:JAPAN SWIM 2020(英)/ジャパンスイム2020(日)

開催日時:2020年12月3日(木)~6日(日)

主催:(公財)日本水泳連盟

会場:東京アクアティクスセンター(江東区辰巳2-2)

出場選手数: のべ408名

競技種目: 28種目/男子14種目、女子14種目 ※男女とも同じ

自由形 50m/100m/200m/400m/800m/1500m、

背泳ぎ 100m/200m、平泳ぎ 100m/200m、

バタフライ 100m/200m、個人メドレー 200m/400m