男子日本代表 中垣内祐一監督「勝てるチームが理想。みんなが納得する成績を取ることがミッション」

東京2020大会でメダル獲得を目指す男子代表を率いる中垣内祐一監督
東京2020大会でメダル獲得を目指す男子代表を率いる中垣内祐一監督

バレーボール男子日本代表は、エースの石川祐希、キャプテンの柳田将洋、20歳のポイントゲッター西田有志、北京2008大会に出場した清水邦広、福澤達哉らが中心となり、FIVBワールドカップ2019で28年ぶりの4位になるなど、進化を続けている。北京以来3大会ぶりのオリンピック出場となる東京2020大会で表彰台を目指す日本代表を率いるのが中垣内祐一監督だ。自身も日本のエースとしてバルセロナ1992大会に出場した経験を持つ。中垣内氏に代表の現状や理想とするチーム、リーダー像、東京2020大会への思いを伺った。

新戦力への期待が増えた

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で国際大会が中止になるなど、2020年シーズンは大変だったと思います。できたこと、できなかったことはどんな部分でしょうか。

できたことは、オリンピックが1年延びたことで、間に合わないと思っていた新戦力への期待が増えたことが一つですね。できなかったことは、その新戦力に試合の経験を積ませられなかったことです。そんなに甘い世界でもなくて、どんなに才能のある若い選手でも経験を積み重ねないとトップレベルでのプレーは難しい。例えば、19歳の高橋藍や他の大学生もそう。振り返ると、石川も年々レベルアップを重ねて、よいシーズンを送れるようになったわけなので、若手が現時点ですぐに他の選手と同様にできるかというと必ずしもそうではない。経験を積むこと以外に近道はないと思っています。

東京2020大会まで時間が限られた中で、そういった新しい選手がメンバー入りする可能性はありますか。

ないわけではないと思います。例えば、ベテランの選手はこの1年延期が命取りにもなりかねない。パフォーマンスは年々落ちていく、時間との戦いになっている選手もいる、そういった選手との裏返しですよね。メンバーは現時点では正直、誰にも分からない。可能性はあると思います。

現在の日本代表は、若手とベテランの垣根がなくいいバランスに見えます。

今の若い選手は物怖じしない子が多くて、昔ほど上下関係も厳しくないですし、若い選手から年上の選手までフラットな関係でいるんじゃないでしょうか。年代的なものでプレーをするわけではないので、ベテランだからいいパフォーマンスができる、点が取れるというわけでもない。取れる選手が点数を取っていく、活躍できる選手が活躍していく。むしろ、東京2020大会の出場権を持っているので、次のパリやロサンゼルスにつながるような強化を継続していますが、そういうふうにドラスティックな(抜本的で思い切った)チーム構成にしていくのも悪くはないと思いますね。

選手たちは国内・海外でリーグを経てオリンピックイヤーに向かうわけですが、リーグ期間に監督として期待することは?

そこでどう成長するかだと思います。リーグの試合を通してどんどん成長してもらいたい。今年は代表選手も試合ができなかったので試合に飢えていると思いますし、リーグで試合を重ねて自分の技術を上げることにつなげてもらいたいと思います。

チーム作りで大事なのはコミュニケーション。試合中に選手に声をかける中垣内監督
チーム作りで大事なのはコミュニケーション。試合中に選手に声をかける中垣内監督
(c)JVA

監督として、描くリーダー像

監督は、どんなリーダーを理想とされていますか。

いろんなタイプのリーダーがいると思いますが、今のチームにおいては、適材適所でスタッフそれぞれが自分の持ち味を出せる、働きやすい、自信を持ってできる、そんな組織の長であることが私の仕事だと思っています。今のチームで自分が何をすべきかを考えた時に、そのやり方に落ち着きました。

リーダーとしてやりがいを感じる、うれしいと感じるのはどんな時ですか。

チームが勝っていく、若い選手がどんどんプレーや精神的にも成長していくところは非常にうれしく思って見ています。

チーム作りで大切と考えているのはどういった点ですか。

コミュニケーションですね。我々のプライオリティーの中でも一番高いポイントです。チームの強化プランの中でも、スタッフ間、選手とスタッフ間のコミュニケーションは非常に重要視しています。特に合宿中にチームを去っていく選手に関しては細心の注意を払って会話するようにしています。スタッフと会話した上で、コーチや時に強化委員長と一緒に「こういう点を頑張って欲しい」などきちんと正直に話すようにしていますし、話し方についても配慮しています。

試合中でも石川選手らが会話する場面が多く見られます。監督としても成長や変化を感じますか。

それは求めていますんでね。徐々にそうできるようになってきているんではないでしょうか。

監督自身もよく選手に声をかけていらっしゃいますね。

コミュニケーションを取ろうと心がけています。そう見ていただけるのであれば、それは素直に喜びたいと思います。

いいチームになるために必要なのは? そのためにリーダーがやるべきことは何だと思われますか?

選手がいかに向上心を持ち続けていられるかに尽きるんじゃないでしょうか。そうなるように会話が大事ですよね。どうなりたいかをまず導き出して、なりたい自分に近づけてあげる努力をする。技術的なところを追い求めて、一つ一つクリアされていくと選手たちも手応えを感じて、さらにやりがいを持ってできるんじゃないでしょうか。

中垣内監督が理想とするチームとは?

簡単な質問ではないですね(笑)。私に課せられた仕事というのは、東京2020オリンピックで、メダルなのか、あるいはそれに近いところなのか、みんなが納得する成績を取ることがミッション。勝てるチームが理想。欲を言えば、例えば(身長)2mを超える1mジャンプできる選手が何人かいる、130kmの速さのサーブを打てる選手が2、3人いる、そんなチームかな(笑)。もちろんそれはないものねだりなので、今いる戦力を組み合わせていかにそういった成績に近づけるか。改善していく点はいっぱいあると思いますが、それがベストでしょう。メンバーもまだ決まっていないので、どの選手がどう成長していくかを楽しみに、理想を最後まで描いて探し続けることですね。

技術面でのストロングポイントは?

「日本が戦っていけるとするならば、それはサーブ起点のプレー」と就任当初から言ってきました。西田みたいなサーバーが出てきたのはいい意味での誤算で、やっぱり西田のような強いサーブで相手を崩してブレイクにつなげていくというのが、我々のバレーの根幹じゃないでしょうか。それから、サイドアウトは真ん中で。今まで日本のバレーは何十年も真ん中からの攻撃を重視してこなかった。そういうバレーボールを続けてきたので、そこはポイントですね。

西田有志のような強いサーブを起点に
西田有志のような強いサーブを起点に
(c)JVA

東京2020大会はベストを尽くし表彰台に

監督もオリンピックに出場されています。オリンピックはやはり特別なものでしょうか。

オリンピックを経験できたということは、少なくとも自分の中で、もし日記や伝記みたいなものがあるとするならば、大きなチャプターの1つかもしれないですね。みんなオリンピックに出たいと思っている。日本代表登録メンバーだけでなくリーグの選手全員が(オリンピックに出場する)12人に入りたいと思って努力を続けているし、その必死さというのは非常によく分かります。通常よりもはるかに高いモチベーションを保ってくれていると思います。

東京に向けての強化プランについては、いかがでしょうか。

ほぼ固まってきています。コンディション次第のところはありますが、来年度が明けたらすぐ試合に追われる感じになると思います。テストマッチ、ネーションズリーグを戦ってオリンピックに入っていく。2018年の世界選手権などふがいない成績(17位)で、ワールドカップではベストパフォーマンスをしようと臨んで、それができて、ベスト4に入れた。それは評価できると思っています。しかし、オリンピックはワールドカップとは別物だから相手も簡単にプレーさせてくれないと思います。1つ1つの試合をきっちり戦って課題を克服できるチームになっていかないと、自分たちの目指す成績は取れないと思うので、そのための準備をしっかりとしていきたいです。

表彰台に乗れるように、東京2020オリンピックでベストのプレーを
表彰台に乗れるように、東京2020オリンピックでベストのプレーを
(c)JVA

東京2020オリンピックでは、どんな日本代表を見せたいですか。

当たり前のことを当たり前のことにできること、当たり前のレベルをどんどん上げていけば自ずと勝利につながっていくと思います。男子バレーは頑張っていますが、その頑張りをなかなかお伝えできないと今まで感じていました。ただ、昨年度ぐらいからようやく皆さんにも注目していただけるようになってきました。そういった流れでオリンピックでも、日本の男子バレーも頑張っているというところを見ていただければと思いますし、成績をちゃんとお見せできるようにしたいと思います。

どこも強い相手ばかりですからね。1つたりとも楽に勝てる試合はないと思いますし、計算が立たない。前回のリオデジャネイロ2016、その前のロンドン2012と、北京から2大会オリンピックに行けなかったわけですから、世界との隔たりはありますし、今、世界ランキング9位といえども(メダルは)近くにあるものではないと思います。それでも、たくさんの日本の方々に見ていただけるオリンピックで、ベストのプレーをすることによって表彰台に乗れたらと思いますし、乗れるようベストを尽くしていきたい。ぜひ男子バレーにも注目していただきたいと思います。