東京2020メダルを製造した熟練工の技術と、後世に受け継がれていくレガシー

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日本開催の過去大会でもメダルを製造した造幣局

東京2020オリンピック・パラリンピックでアスリートに贈られる東京2020メダルは約5000個。その製造を独立行政法人造幣局(以下、造幣局)が請け負っています。造幣局は、貨幣のほか、勲章や褒章、また、それらの製造技術を生かした他の金属工芸品を製造する事業を行っており、東京1964、札幌1972、長野1998と過去に日本で開催された3大会でもメダルを製造しました。今大会のメダルを製造するにあたり、重要な役割を担ったのは2人。共に長野1998大会のメダル製造に関わった経験を持つ、仕上係の坂和也さんと圧写(あっしゃ)係の冨岡省太さんです。

坂さんは1982年、冨岡さんは1992年に入局し、現在は勲章や金属工芸品を製造する装金課に籍を置いています。今回のメダル製造に携わったのは、坂さんと冨岡さんを含めて20人ほど。メダルの金型を作る工程を除くと、製造工程は大きく2段階に分かれました。東京2020組織委員会が供給した地金を円形に打ち抜き、それをプレス機にかけながら表と裏のデザインを同時に転写する「圧写」と、圧写後のメダルに着色加工を施して陰影を付け、よりデザインを立体的に表現する「仕上げ」です。「圧写」を冨岡さんのチームが、「仕上げ」を坂さんのチームがそれぞれ行いました。

長野1998大会のメダル製造にも携わった経験を持つ坂和也さん
長野1998大会のメダル製造にも携わった経験を持つ坂和也さん

すべてを同じ品質にする難しさ

1日8時間、チーム4人で作業をして製造できるメダルは15個から20個ほど。苦労したのは「すべてを同じ品質にしなければいけないこと」だったそうです。1個目と5000個目に違いがあってはいけません。オリンピックのメダルは直径85mm、厚さは最小部分で7.7mm、最大部分で12.1mm。重さは金が約556g、銀が約550g、銅が約450gです。パラリンピックのメダルは直径85mm、厚さは最小部分で7.5mm、最大部分で10.7mm。重さは金が約526g、銀が約520g、銅が約430gとそれぞれに異なります。加えて各メダルの輝きも同じにする必要があり、「何度も試行錯誤を繰り返した」と言います。

「1個目と5000個目では、プレスをしたときの輝きがやっぱり違ってくるんですね。そこを同じ輝きにするために、ガラスビーズを吹き付けてメダル表面の光沢を落ち着かせることができる機械も使いました。それらを使用しながら、僕らが長年かけて培った技術や勘で調整し、これくらいでやれば全く同じものが作れるだろうという確信が最終的には得られました」(坂さん)

今回のメダルの製造工程は手作業によるところも多く、教えたからと言っても一朝一夕にできるものではありません。坂さんも冨岡さんも長野1998大会のメダル製造に関わり、先輩たちから指導を受けた上で、技術を磨いてきたからこそ今に至ります。今回それぞれのチームには、20代や30代の職員もいるそうで、冨岡さんは「普段作業を行う中で、後輩たちには自分の技術を惜しみなく教えてきたので、それを継承してもらえれば」と期待を寄せていました。

メダルの製造作業を行う冨岡省太さん
メダルの製造作業を行う冨岡省太さん

メダルに込められた熟練工の技術と思い

東京2020組織委員会は、このメダルを製造するにあたり、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を実施しました。これは、全国から使用済みの携帯電話などの小型家電を提供してもらい、そこから集めたリサイクル金属を原材料に、メダルを製造するプロジェクトです。オリンピック・パラリンピックでは初の試みで、東京2020組織委員会は、このプロジェクトを通じて、小型家電リサイクルの定着と環境にやさしい持続可能な社会が、東京2020大会のレガシーとなることを目指しています。それと同じ意味で、メダルを製造する造幣局の技術もまた、後世に受け継がれていくレガシーとなっていくのかもしれません。

今回、メダル製造に携わった者として、冨岡さんは東京2020大会に向けてこんな思いを抱いています。
「日本で開催される大会なので、外国の方にも日本に良いイメージを持ってもらい、のちのち語り継がれる素晴らしい大会になってほしいです。その中に自分たちが製造したメダルも世界中に記憶されるといいなと思っています」

坂さんは、選手にメダルがかけられたときの光景をこう想像していました。
「私は1回1回、テレビにかじりついて見ていると思います。選手の皆さんはメダルをかけて国歌を聴くと思うので、それを見ながら『あのメダルは自分たちが作った製品なんだな』とひしひし感じるんでしょうね」

死力を尽くして勝ち得たメダルはアスリートにとって最高の栄誉です。そしてそのメダルには、熟練工の卓越した技術や思いが込められていることも、東京2020大会の見どころの1つと言っていいかもしれません。

東京2020オリンピックメダル
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