人々に希望もたらす 国民栄誉賞を受賞した夏のオリンピアンたち

2012年に国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里さん
2012年に国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里さん

9月5日は「国民栄誉賞の日」。1977年の同日、初めて授与式が行われたことに由来する。受賞者はプロ野球選手の王貞治さんで、756本の本塁打世界新記録の達成がたたえられた。これまでに26人1団体が受賞しているが、オリンピックでの偉業によるものも多い。そこで国民栄誉賞を受賞した夏のオリンピアンらを紹介する。

現在は公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)会長を務める山下泰裕さん
現在は公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)会長を務める山下泰裕さん

山下泰裕さん スポーツ選手として2人目(1984年)

山下泰裕さんはロサンゼルス1984大会の柔道男子無差別級で金メダルを獲得。その功績を評価され、王さんに続いてスポーツ選手としては2人目、アマチュア選手としては初の受賞となった。現役時代は「怪物」と呼ばれ、203連勝という金字塔を打ち立てた。

ロサンゼルス1984大会では、2回戦で右ふくらはぎを肉離れするアクシデントが降りかかる。しかしそれをもろともせず、決勝まで勝ち上がり、エジプトのモハメド・ラシュワン選手との大一番を横四方固めで制した。公式戦559戦で528勝16敗15分け、勝率は9割を超え、外国人選手には生涯無敗という記録を持つ。約7年6カ月もの間、無敗を貫き、1985年に惜しまれつつ引退した。

シドニー2000大会の女子マラソンで金メダルを手にした高橋尚子さん
シドニー2000大会の女子マラソンで金メダルを手にした高橋尚子さん

高橋尚子さん 女子スポーツ選手第1号(2000年)

シドニー2000大会の女子マラソンを制した高橋尚子さんは、女子スポーツ選手の受賞第1号となった。レースは34km付近でスパートをかけた高橋さんが、猛追するルーマニアのリディア・シモン選手を振り切り、2時間23分14秒の当時のオリンピック記録を更新するタイムでゴール。陸上競技で日本女子初となる金メダルを手にした。

アムステルダム1928大会に人見絹枝さんが日本女子選手として、オリンピック初出場を果たし、陸上女子800mで銀メダルを獲得してから72年。快挙を成し遂げ、「Qちゃんスマイル」を振りまく姿に、多くの日本人が勇気や感動をもらった。

ロンドン2012大会の決勝に臨む吉田沙保里さん(右)
ロンドン2012大会の決勝に臨む吉田沙保里さん(右)

吉田沙保里さん 記念品は「V13」にちなんだ真珠(2012年)

ロンドン2012大会のレスリング女子55kg級で金メダルを獲得し、アテネ2004大会から続くオリンピック3連覇を成し遂げた吉田沙保里さん。2011年秋の世界選手権に続き、カナダのトーニャ・バービーク選手と対戦した決勝では、隙を与えず2-0で快勝した。

同年9月に行われた世界選手権でも優勝し、オリンピックと合わせて13連覇を達成。レスリング界前人未到の記録を打ち立て、国民栄誉賞の受賞となった。そんな吉田さんには、授与式で13連覇にちなみ、13ミリの金色の真珠が記念品として贈られた。

リオデジャネイロ2016大会で4連覇を達成し笑顔を見せる伊調馨さん
リオデジャネイロ2016大会で4連覇を達成し笑顔を見せる伊調馨さん

伊調馨さん 女子選手初のオリンピック4連覇たたえる(2016年)

吉田さんに次ぐ国民栄誉賞の受賞は、同じレスリングから生まれた。リオデジャネイロ2016大会の女子58kg級に出場した伊調馨選手は、決勝では終了間際に逆転勝利を収め、金メダルを手にした。アテネ2004大会からオリンピック4連覇を達成。女子の個人種目における初めての快挙だった。

「人一倍の努力と厳しい修練」の先に、2年上の先輩である吉田さんと同じ栄誉にあずかった。授与式には着物姿で臨んだ伊調さん。和装の文化を海外に伝えたいという思いで希望した西陣織による金色の帯を記念品で受け取った。

ロンドン2012大会の決勝で、アメリカと激しい競り合いを見せるなでしこジャパンの熊谷紗希選手(中央)
ロンドン2012大会の決勝で、アメリカと激しい競り合いを見せるなでしこジャパンの熊谷紗希選手(中央)

なでしこジャパン 初の団体受賞(2011年)

1977年の王さん初受賞から40年以上が経過する中、唯一の団体受賞は2011年のなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)だ。同年のFIFA女子ワールドカップ優勝をたたえられてのことで、東日本大震災からの復興を目指す人々に勇気を与えた。なでしこジャパンは翌年のロンドン2012大会でも活躍し、銀メダルを獲得している。

当時受賞したほとんどのメンバーはオリンピックの舞台を経験。澤穂希さんといった引退した選手もいるが、DF熊谷紗希選手やFW岩渕真奈選手といった現在もチームの中心としてプレーする選手もいる。来年の東京2020大会では「世界一」や、オリンピックの決勝を知る選手として、チームをけん引していくことが期待される。

歴史にも、人々の記憶にも残る国民栄誉賞を受賞した選手たち。東京2020大会では、どんな選手の活躍が社会に希望を与えてくれるのか楽しみだ。