北島康介、萩野公介ら「競泳ニッポン」の歴史を彩るメダリストたち

競泳はこれまで多くのメダルを日本にもたらしてきた。夏季オリンピックにおける累計メダル数80個は、体操(98個)、柔道(84個)に続く第3位、金22個は第4位である。日本人として初めてオリンピックを連覇した鶴田義行さん(アムステルダム1928、ロサンゼルス1932大会)、日本の女子として初の金メダルに輝いた前畑秀子さん(ベルリン1936大会)も同競技の選手だ。黎明期から現在に至るまで、数多くのメダリストを輩出した競泳ニッポン。その輝かしい歴史を彩ってきた選手たちの活躍を振り返る。

金メダル12個、日本のお家芸「平泳ぎ」

金メダル22個のうち、実に12個を量産しているのが男女の平泳ぎだ。男子200mで6個、男子100mと女子200mで3個ずつと、まさに日本の「お家芸」と言っていい種目だろう。前述した鶴田さんと前畑さんも、それぞれ200mで快挙を成し遂げている。ただ、その中でも北島康介さんがアテネ2004、北京2008で達成した100m・200mの2大会連続2冠は、日本競泳界における金字塔として燦然と輝く。「チョー気持ちいい」(アテネ)「何も言えねぇ」(北京)と、優勝後の感情を率直に表したコメントも大きな話題を呼んだ。

2大会連続2冠の金字塔を打ち立てた北島康介さん
2大会連続2冠の金字塔を打ち立てた北島康介さん

平泳ぎでは岩崎恭子さんの活躍も印象深い。14歳でバルセロナ1992大会に出場した岩崎さんは200mで終盤に驚異的な逆転劇を披露し、競泳史上最年少の金メダル獲得者となった。レース直後の「今まで生きてきた中で、一番幸せです」というコメントとともに、オリンピックの名場面として語り継がれている。

リオデジャネイロ2016大会では、200mで金藤理絵さんが金メダルを獲得するなど、平泳ぎは好成績が続いている。欧米の選手に比べ、日本人はどうしてもパワーで劣る部分があるものの、より緻密な技術が求められる平泳ぎは、その特性を生かしやすい一面がある。歴史を見ても分かるように、そうした特長が連綿と現在に受け継がれているのだ。東京2020大会に向けても、200mの前世界記録保持者である渡辺一平らに金メダル獲得の期待が高まっている。

リオ2016大会の女子200m平泳ぎで金メダルを獲得した金藤理絵さん
リオ2016大会の女子200m平泳ぎで金メダルを獲得した金藤理絵さん

萩野、瀬戸の台頭で強さを増した「個人メドレー」

平泳ぎが長く安定した強さを見せてきた一方で、2010年代に入って結果が出るようになったのが個人メドレーだ。ロンドン2012大会で当時17歳の高校3年生だった萩野公介が400mで、「水の怪物」という異名を持つマイケル・フェルプスさん(アメリカ)に競り勝ち、銅メダルを獲得。日本の男子選手としては初の快挙で、その後、複数種目で勝負できる「マルチスイマー」としての地位を確立していった。萩野はリオ2016大会の400mで金、200mで銀、加えて男子4×200mリレーでも銅と1大会で3つのメダルを手にした。

個人メドレーは萩野公介(左)と瀬戸大也が台頭したことで強さが増した
個人メドレーは萩野公介(左)と瀬戸大也が台頭したことで強さが増した

また萩野の盟友で、幼いころからのライバルでもある瀬戸大也も着実に成績を伸ばしている。リオ2016大会では400mで3位表彰台。2019年の世界選手権では200mと400mの2冠を達成し、同種目で早々と東京2020大会への出場を内定させた。瀬戸は2013年と2015年の世界選手権でも400mを連覇しており、国際大会での強さは折り紙付きだ。

女子では大橋悠依に期待が懸かる。シドニー2000大会の400mで田島寧子さんが銀を取って以降、個人メドレーではメダルがないものの、大橋は2017年と2019年の世界選手権において、200mで銀(2017年)、400mで銅(2019年)を獲得。東京2020大会での戴冠も視野に入っている。

「背泳ぎ」と「バタフライ」は継続的にメダルを獲得

過去に2つの金メダルを手にしているのが背泳ぎだ。いずれも男子100mで、ロサンゼルス1932で清川正二さんが、ソウル1988で鈴木大地さんがオリンピックの歴史に名を刻んでいる。鈴木さんの武器であった、スタートから50mプールの半分以上も潜って進む「バサロ泳法」は後に彼の代名詞にもなった。

男子の背泳ぎは長く入江陵介がトップの座に君臨する
男子の背泳ぎは長く入江陵介がトップの座に君臨する

男子の背泳ぎは、ロンドン2012大会の100mで銅、200mで銀を獲得した入江陵介が現在も日本のトップに君臨しており、31歳となる来年、東京の地で集大成を迎えようとしている。女子はシドニー2000からロンドン2012まで4大会連続で、中村礼子さんや寺川綾さんらがメダルを獲得し、一時代を築いた。

バタフライは金メダルこそ、ミュンヘン1972の女子100mで青木まゆみさんが手にした1つだけだが、アテネ2004以降は4大会連続で表彰台に入っている。男子では山本貴司さんや松田丈志さんが200mでそれぞれ銀メダル、銅メダルを獲得し、リオ2016大会でも坂井聖人が同種目でフェルプスさんを0.04秒差まで追い詰める銀メダルに輝いた。個人メドレーが主戦場の瀬戸も、バタフライを得意としており、東京2020大会ではメダルを視野に入れている。女子は星奈津美さんがロンドン2012、リオ2016と2大会連続200mで銅メダルを取り、この種目を支えた。

フェルプスさん(右)を0.04秒差まで追い詰めた坂井聖人
フェルプスさん(右)を0.04秒差まで追い詰めた坂井聖人

苦難の時代が続いていた「自由形」だが

一方、体格やパワーの差が出やすい自由形は、日本人にとっては不利な種目と言える。アテネ2004大会で柴田亜衣さんが女子800mを制しているものの、多くのメダルは1960年以前にさかのぼる。しかし、リオ2016大会では、男子4×200mリレーで東京1964大会以来の銅メダルを獲得。また2019年の世界選手権では、松元克央が男子200mで銀メダルを手にするなど、海外の強豪と互角に戦える選手も出てきた。

アテネ2004大会の女子自由形800mで金メダルに輝いた柴田亜衣さん
アテネ2004大会の女子自由形800mで金メダルに輝いた柴田亜衣さん

日本の競泳は、個人種目だけではなく、リレーでも結果を残している。特に入江、北島さん、松田さんという3人のメダリストを擁して臨んだロンドン2012大会の男子4×100mメドレーリレーでは銀メダルを獲得しており、同じく女子も銅メダルに輝いた。東京2020大会では、男女2名ずつの4人でチームを組む混合4×100mメドレーリレーが新種目として行われるため、そこでの好成績も期待される。

ロンドン2012大会ではメドレーリレーで銀メダルを獲得
ロンドン2012大会ではメドレーリレーで銀メダルを獲得

競泳は順位だけではなく、タイムも重要視されている。年々、選手たちの技術は進化しており、金メダルを取るためには、オリンピック記録か世界記録を更新する、もしくはそれに近いタイムを出すことが求められるだろう。世界最速を争うスイマーたちが東京の地に集う来年、また新たな歴史が刻まれていくはずだ。

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