姉妹で目指すオリンピックの金メダル。同じ夢、共に支え合い

姉妹で東京2020オリンピックの金メダル獲得を目指す川井梨紗子(右)と友香子
姉妹で東京2020オリンピックの金メダル獲得を目指す川井梨紗子(右)と友香子

オリンピックに臨む選手たちの立場は、それぞれ異なる。夢や希望を抱いてその舞台に立つ者もいれば、雪辱を期して再び挑戦する者もいる。競技や自らの実力によって目標も違ってくるだろう。東京2020オリンピックに出場する、もしくは出場を目指す日本人アスリートの中には、同じ夢を抱き、共に支え合う姉妹がいる。彼女たちの夢は「2人で金メダルを取ること」。東京の地でその悲願達成に挑む2組の姉妹を紹介する。

川井梨紗子・友香子(レスリング)

父はグレコローマンの元学生チャンピオン、母は世界選手権に出場した経験を持つというレスリング一家に生まれた姉妹は、小学生のときに競技を始め、切磋琢磨をしてきた。先に花開いたのは3歳年上の姉・梨紗子。リオデジャネイロ2016オリンピックの女子63kg級で初出場ながら圧倒的な強さを見せ、金メダルを獲得した。

姉の戴冠を目の当たりにした妹の友香子は「次は2人で」という思いを強くしたが、それには解決しなければならない問題があった。オリンピックにおけるレスリングの各階級代表は、1カ国・地域で1人。体格がさほど変わらない2人(梨紗子は160cm、友香子は162cm)は、階級を分ける必要があったのだ。話し合いの結果、減量しやすい体質の梨紗子が57kg級で、若く筋肉が付きやすい友香子が62kg級で、東京2020オリンピックの出場を目指すことになる(編注:2018年から新階級となり、女子は50、53、57、62、68、76kgという階級区分になった)。

リオ2016オリンピックの女子63kg級で梨紗子は金メダルを獲得
リオ2016オリンピックの女子63kg級で梨紗子は金メダルを獲得

ただ、それにより梨紗子にとっては、乗り越えなければならない高いハードルが立ちはだかることになった。この階級にはオリンピック4連覇中(63kg級で3大会、58kg級で1大会)の伊調馨が君臨していたからだ。もっとも、梨紗子はあえてこのいばらの道を選んでいる。リオ2016オリンピックで63kg級の金メダルを取ったとはいえ、梨紗子の本来の階級は58kg級。しかし、周囲からの勧めにより伊調との対決を避けて63kg級に上げた経緯もあり、頂点に立っても複雑な感情はぬぐい切れなかった。「今度は馨さんに勝って出場したい」。そう決意を固めていた。

そして梨紗子は、その悲願を結実させる。2019年7月に行われた世界選手権の代表選考を懸けたプレーオフで、死闘の末に伊調を破った梨紗子は、メダル獲得で東京2020オリンピック出場が内定となる9月の本大会でも優勝を飾り、再び大舞台への切符を勝ち取った。伊調とのプレーオフでは友香子がセコンドにつき、姉をサポート。2人の力で絶対女王の壁を乗り越えた。

一方、友香子も2018年の世界選手権準優勝など国際舞台で着実に結果を残すようになっていた。梨紗子が優勝した2019年9月の世界選手権では、3回戦で敗れ肝を冷やしたが、敗者復活戦を勝ち上がり、3位の座を死守。この結果、姉妹そろって出場権を獲得し、夢への第一歩を刻んだ。

「思ったことをバンバン言う」25歳の梨紗子と、「おとなしくて内に秘めるタイプ」である22歳の友香子。性格は違えど、思い描いている夢は同じだ。「東京の地で一緒に金メダルを取る」。その願いを成就させるべく、精進を続けている。

東京2020オリンピックの出場権を勝ち取った友香子(赤)
東京2020オリンピックの出場権を勝ち取った友香子(赤)
(c)SACHIKO HOTAKA(日本レスリング協会提供)

永井友理・葉月(ホッケー)

28歳の姉・友理はエースストライカーでチームの得点源。8月で26歳になる2歳違いの妹・葉月はゲームを組み立てる司令塔。東京2020オリンピックで躍進が期待されるホッケー女子日本代表「さくらジャパン」において、この姉妹は中核を担っている。

両親も元選手というホッケー一家で育った2人にとって、競技に取り組むようになったのは必然だった。先に高く評価されたのは葉月で、そうした状況を友理は「ずっと比べられて、妹に劣等感を持っていた」と振り返る。葉月や家族に対してきつく当たることがあり、わだかまりもあった。

しかしそんな緊張関係も、友理が留学し様々な経験を積んだことで、自然と緩んできた。葉月自身も海外に出て、視野を広げたこともあり、2人はお互いをより理解し、信頼し合うパートナーとなった。今では「妹は他の人が狙わないところにパスを出してくれるし、FWとして非常にやりやすい」と友理が語れば、葉月も「勝たなければいけない試合で必ずゴールを決めてくれる。本当に信頼できるFWです」と姉を称賛する。

さくらジャパンの中核を担う永井友理(右)と葉月の姉妹
さくらジャパンの中核を担う永井友理(右)と葉月の姉妹

もっとも姉妹で出場したリオ2016オリンピックでは、辛酸をなめた。父である永井祐司氏が監督を務めたさくらジャパンは、1分け4敗の10位に終わり、世界の厚い壁に跳ね返された。

「1勝もできなかったことがすごく悔しかった。私たちは父が監督で、家族みたいな感じで行かせてもらったのに、結果を出せず、何もできなかった。自分としても、チームとしても良いところを全然出せなかったんです」

友理は当時をそう悔いる。他の国際大会とは違う独特の雰囲気。加えて親と姉妹で出場するという責任感もまた2人の動きを重くした。葉月も「とにかく結果を残したいという気持ちが先走って、悔しさと虚しさが残る。忘れたい記憶です」と、唇をかむ。

東京2020オリンピックは、2人にとって雪辱の舞台だ。チームの目標は金メダル獲得。俊敏さや攻守の切り替えのスピードという日本の武器は世界の水準に達しており、「そこを磨いていけば、頂点を目指せる」と、姉妹は考えている。もちろんチームの命運を握る2人の活躍なくして、道はひらかれないだろう。かつてはホッケーが原因で距離ができた姉妹の心だが、今はホッケーを通じてつながっており、同じ夢に向かい、共に支え合っている。

リオの地では不本意な結果に終わった。東京でその雪辱を果たす
リオの地では不本意な結果に終わった。東京でその雪辱を果たす