プレーバック・リオ 決別した過去の自分、金藤理絵を変えたカザンでの敗北

リオデジャネイロ2016オリンピックにおいて、日本は金12、銀8、銅21と計41個のメダルを獲得した。選手たちは何を思い、この大舞台に臨んだのか。今も記憶に新しい、感動と興奮に包まれたシーンを振り返る。

プレーバック・リオ 金藤理絵が女子200m平泳ぎで金メダルを獲得
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競泳女子200m平泳ぎ決勝結果

1位:金藤理絵(日本) 2分20秒30

2位:ユリア・エフィモワ(ロシア) 2分21秒97

3位:史婧琳(中国) 2分22秒28

ストーリー

金藤理絵がオリンピック、世界選手権を通じて初めて手にしたメダルは、金色に光り輝いていた。27歳にして、ようやくつかみ取った。女子200m平泳ぎで世界のトップを争う力はあるはずなのに、大舞台ではなかなかメダルに届かなかった。これまで指摘されてきた勝負弱さを、リオデジャネイロ2016オリンピックで払拭したのだ。

「うれしい気持ちと、ここまで待たせてしまってすみませんという気持ちです。今までメダルを取るチャンスが何度もあったのに、取れなかった。初めて表彰台の上で、自分に向けられた君が代を聞くことができたし、皆さんに喜んでもらえて本当に良かったです」

前半の100mはスタミナを温存しながら、先行するライバルたちをじっくりと追う展開。そして100mのターン後に先頭に出ると、ペースを一気に上げていった。「ラスト50mは、今までのきつい練習はこのためにやってきたんだと思って泳いだ」と、トップを譲ることなく、2位の選手に1秒以上の差をつける圧巻の強さを見せた。

19歳で初出場した北京2008オリンピックでは7位入賞。世界選手権も2009年から4大会連続で出場した。しかし、いずれもあと一歩で表彰台には届かず、「一番狙っていた」ロンドン2012オリンピックに至っては、その舞台に立つことすらかなわなかった。2015年の世界選手権(ロシア・カザン)で6位に終わった直後には、「競技を続けるべきか迷いが生じた」という。

だが、逆に世界選手権での結果が金藤の心に火をつけた。「本当にこのまま終わっていいのか」。今こそ過去の自分と決別し、変わらなければいけない。金藤は翌年のオリンピックに向けて、覚悟を決めた。その変貌ぶりには金藤を指導する加藤健志コーチも舌を巻いた。

「これまで何もかもうまくいかなかった。カザンで自分のことを情けないと思ったのが、変わった一番の要因だと思います。僕から逃げなくなった。最後の覚悟だったと思います」

泳ぎを改善し、それこそ「すべてを懸けて」トレーニングに取り組んだ。するとその成果はオリンピックイヤーに数字となって現れる。2016年2月の試合で2分20秒04を出し、自身が持っていた日本記録を更新。さらに4月の日本選手権では2分19秒65をマークし、日本人の女子としては史上初めて「2分19秒台」の領域にたどり着いた。これは、このシーズンにおける世界最高のタイムで、金藤は一躍「金メダル候補」として、リオの舞台に臨むことになる。

再び訪れたメダル獲得のチャンス。もう弱かった自分はいない。「全部の力を出し切って、最後にトップでゴール板にタッチする」。金藤は心にそう誓い、その通りの泳ぎで戴冠を果たした。

「もし昨年の世界選手権でメダルを取っていたら、今の自分は絶対になかったと言えます。本当にあのときの結果でスイッチが入りましたし、変わらなければいけないと思いました」

金メダルへの道は長く、険しいものだった。しかし、だからこそその価値は大きい。加藤コーチは「人ってこんなにも変われるんだな」と愛弟子の快挙に目を潤ませた。挫折を繰り返しながら、それでも諦めなかった金藤の努力は、この言葉に集約されていた。

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