プレーバック・リオ 内村航平とベルニャエフ、互いを称賛し合った美しき死闘

激闘を繰り広げた内村航平とオレグ・ベルニャエフ(左)
激闘を繰り広げた内村航平とオレグ・ベルニャエフ(左)

リオデジャネイロ2016オリンピックにおいて、日本は金12、銀8、銅21と計41個のメダルを獲得した。選手たちは何を思い、この大舞台に臨んだのか。今も記憶に新しい、感動と興奮に包まれたシーンを振り返る。

プレーバック・リオ 内村航平が男子個人総合で連覇達成
02:06

体操男子個人総合決勝結果

1位:内村航平(日本) 92.365点

2位:オレグ・ベルニャエフ(ウクライナ) 92.266点

3位:マックス・ウィットロック(イギリス) 90.641点

ストーリー

内村航平はかつてないほど追い込まれていた。第5種目の平行棒が終わった時点で、首位のオレグ・ベルニャエフとは0.901点差の2位。いくら最後に残っているのが得意の鉄棒とはいえ、1点に近い差を覆すのは困難に思われた。2009年からオリンピックや世界選手権を含む国際大会で負け知らずだった個人総合で、王者・内村が敗れるのか。歴史的瞬間を目前に、会場内は異様な空気に包まれた。

窮地に立たされた内村だが、ここで長年王座に君臨してきた真骨頂を発揮する。先に鉄棒の演技に臨むと、「カッシーナ」など4つの離れ技を美しく決め、着地もしっかりと降り立った。完璧な内容で15.800点というハイスコアをマークし、ベルニャエフにプレッシャーをかける。

一方、直後に演技したベルニャエフは硬さが見られた。堅実に要素はこなしたものの、着地でバランスを崩し、一歩前に出てしまう。14.800点という得点が出た瞬間、ベルニャエフは手を広げ、無念な表情をにじませた。

「今回ほど負けるんじゃないかと思った試合はなかった。オレグが今回は良い試合運びをしましたし、次にオレグと大きな舞台で戦ったら、僕は絶対に勝てないと思います」

競技終了後、内村はいかに追い詰められていたかを強調し、ライバルの健闘をたたえた。内村は最初のゆかで15.766点を記録し、好スタートを切るが、ベルニャエフも負けじと4種目を15点台でそろえる。さらに第5種目の平行棒では16.100と高得点をたたき出し、リードを広げた。だが、内村は慌てなかった。

「オレグが(平行棒で)ものすごい点数を出したので、鉄棒で勝負するしかないと思っていました。点差も分かっていましたが、そこまで詳しく計算はせずに、自分の演技さえすれば結果はついてくると。この演技で勝負すると練習の段階から決めていました」

その冷静さ、覚悟が鉄棒での演技に表れた。「自分の演技をしたうえで負けたら仕方がない。そう吹っ切っていたので、良い演技ができたんだと思います」と、内村は胸を張った。

美しき死闘に華を添えたのは、メダリスト会見でのある出来事だ。内村に対し記者から「審判にかなり好意的に見られているのでは」という質問が投げかけられた。内村は淡々と「全くそうは思わない。どんな選手にも公平にジャッジしてもらっていると思う」と返したが、その質問に嫌悪感を表したのがベルニャエフだった。「彼はキャリアの中でいつも高い点数を取ってきた。これは無駄な質問だと思う」と一刀両断。さらに「彼はすでに伝説の男だ。そんな選手と戦えて僕は幸せだった」と語り、尊敬の念を示した。互いが死力を尽くした戦いだけではなく、試合後のこうした振る舞いもまた名勝負に彩りを加えたのは間違いない。

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