奥原希望「ファンの皆さんや子どもたちの力になりたい」 私がSNSで発信する理由

新型コロナウイルス感染症拡大防止のための自粛やステイホームで思うような活動ができないながらも、東京2020大会への歩みを止めることなくトレーニングを続け、SNSで思いを発信しているアスリートがいる。彼らは今、何を考え、なぜ発信し続けているのか。

リオデジャネイロ2016オリンピックの女子バドミントンで、シングルス日本勢初となる銅メダルを獲得し、翌2017年の世界選手権で優勝。東京2020オリンピックで金メダルを狙う奥原希望選手に近況やSNSを通じて伝えたいこと、大会への思いなどを語っていただいた。

ダイレクトに言葉を届けられるのがSNS

全英オープンが終わって帰ってきた3月中旬から2週間の自宅待機を言われた時期は、自分が今日は何をやったかをわかるように、また何もせず1日過ごせる中で自分にプレッシャーを与える要素として、Day 1、 Day 2と日記をつけるようにSNSに投稿していました。それと同時に、試合がない状況の今、いつも支えていただいているファンの皆さんのために何かできることはないかと考えたとき、私にできることはダイレクトに言葉を届けることだと思って。それが SNS のよさでもあるし、自分のアカウントで直接、自分の感じていることや、やっていることを発信することで、ファンの皆さんにとっても力になるのではと考えました。「力になっています」「こういう発信うれしいです」と言ってくださる方も多くて、うれしく思っています。

子どもたちが明るい未来に向かうきっかけに

私自身、教育に関心や興味があり、人というのは環境や教育によって変えられる要素があると思っています。今の時代は大会がなくなったりしている状況でも、自分が調べれば欲しい情報にたどり着ける世の中になっている。子どもたちにとっても、自ら行動して発信している人の情報を収集して、それを感じ取ることができます。現役選手として世界のトップと戦っている私が発信することによって、子どもたちが何らかのきっかけをつかめるチャンスになればいいと思いますし、だからこそ自分の中に留めているだけではもったいない。現役生活というのは永遠に続くものではないので、現役中に伝えられることはどんどん伝えていきたいと思っています。

あるとき、中高生に向けたブログをInstagramの「ストーリーズ」にも載せたんですが、たくさんの中高生からダイレクトメッセージをいただきました。「今できることを頑張ります」というメッセージも多くいただき、届けたいと思っていた子どもたちに響いていたので、書いてよかったなと思いました。コロナの影響で大会がなくなったことについての思いは、その子たちにしかわからないことかもしれません。でもみんなのこの先の未来はもっと明るいんだよ、ということを伝え続けながら、彼らがよい未来を切り開ける、その突破口となるきっかけになることができたらとも考えています。どの競技もそうですが、大会中止を事実として告げられたとき、目標がなくなってしまった人たち、特に高校3年生のケアは今までになかった体験だけに指導者や親御さんにとっては大変難しいことだと思います。そういった状況でも、私だけではなくいろんなアスリートや誰かの言葉をきっかけに前を向いて進んでいってもらえたらうれしいです。

スポーツの素晴らしさを伝えることもアスリートの役割

「希望の架け橋」(トークイベント)の配信は、他の競技のアスリートの考えを聞いてみたいと思って始めたものです。本田圭佑さんや登坂絵莉さんに出ていただきました。東京2020オリンピックというのは、バドミントンだけではなくオリンピック競技すべての大切な夢舞台。だからこそ横のつながりも大切にしながらスポーツ界みんなで盛り上がっていきたいですし、コロナの影響でどの競技も練習ができない時期はスポーツ界にとって転機となると思うので、他のアスリートがどう考えているのか気になって、聞いてみたいと思いました。情報交換をしながらどうやって盛り上げていくかを考えていきたいので、アスリート同士で連絡を取り合っています。

アーティストやアスリートは社会の一員として、エンターテイナーの一つの分野として、なくてはならないものだということを示していかないと衰退していってしまいます。アフターコロナでは、アスリートも世の中に貢献できることやその役割を示していかなければならない立場だと思っています。いつまでも守られている立場ではいけない。スポーツは、言葉や文化がなくても感動や勇気を伝えられる素敵なもの。それは一生懸命やって、もがいた先にこそあるもので、だからこそ、今後もスポーツの素晴らしさを次の世代に伝えていきたい。そのためにスポーツ界全体で頑張って、みんなで今を乗り越えていかなければと思っています。

けがが気づかせてくれたこと。一生懸命やれば、プラスに変えられる

こうした状況下でも、行き着くところは今できることを精いっぱい全力でやること、それがすべてです。できることは限られているかもしれませんが、変わらず自分ができることを見つけてやるだけだと思います。それを気づかせてくれたのはけがです。過去のけがの経験があったから、今、私はそう言えるのだと思います。

誰もが挫折をしたくない、失敗をしたくないと思って頑張っていると思いますが、必ず壁や山が目の前に現れます。私にとってはそれがけがでした。左膝、右膝の手術や右肩、けがをしたことで本当にいろいろ考えさせられ、それによって視野が広がり、今の私がいます。失敗や心を折られるような嫌な出来事があったとしてもなんとか立ち直って、自分の力で考えて行動し、自分が輝けるように努力する。一生懸命やることで、マイナスな出来事もすべてプラスに変えられると私は思っています。けがをした時は、本当にネガティブに考えることもありました。それでもその度に前を向いてやるしかないと思ってやってきました。 今までのどの出来事が欠けてもオリンピックのメダルには届かなかったと思いますし、世界選手権の優勝もそれまでやってきたことの成果、できることを一生懸命全力でやってきたからこその結果だと思います。

リオの銅メダルを超え、東京では「頂点に立ちたい」と語る奥原選手
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オリンピックは誰が金メダリストにふさわしいかを試す場

東京2020オリンピックの1年延期については、直近の大会が中止になってきていましたし、発表された時には覚悟ができていました。私のやることやスタンスは変わらないので、すんなり受け入れられたというか動揺することはなかったですね。今できることをやって2021年に東京オリンピックが開催されれば、そこで自分ができるベストパフォーマンスをする、そして結果がついてきてくれるのを待つだけだと思っています。オリンピックは自分を試す場、試合という字を「試し合い」と書くのは本当にそうだと思っていて、オリンピックの金メダリストというのは、実力や運も含めて金メダリストの器の人にしかなれないものだと思っています。だからこそ、ほど遠くて簡単にはなれない。2021年の時点で、誰が一番金メダリストにふさわしいかを試す場、それに値する人間であれたらと思います。

私が流した「君が代」をみんなで歌いたい

私の人生としては一つの通過点ですが、私のアスリートとしての、バドミントン人生の最大の目標は東京オリンピックです。現役生活の中で、地元でオリンピックを迎えられる、こんな奇跡的なことってないですよね。だからこそこのチャンスはつかみたいと思っています。リオデジャネイロで銅メダルを取りましたが、その悔しさは今でも忘れていません。頂点に立ちたいです。地元開催はプレッシャーにも力にもなりますが、自分に期待する意味を込めてそのすべてをパワーにして、私が流した「君が代」をみんなで大きな声で歌えたらと思います。

私がSNSで発信する理由

藤田慶和「子どもたちに、プロラグビー選手から夢を」

山田恵里「誰かの勇気になれるように、感謝を伝えたい」

柳田将洋「若い世代の未来のために、経験を伝えたい」