プレーバック・リオ 土性沙羅「最後まで絶対に諦めない」克服した己の甘さ

リオデジャネイロ2016オリンピックにおいて、日本は金12、銀8、銅21と計41個のメダルを獲得した。選手たちは何を思い、この大舞台に臨んだのか。今も記憶に新しい、感動と興奮に包まれたシーンを振り返る。

プレーバック・リオ 土性沙羅が女子69kg級で金メダルを獲得
01:37

女子レスリング69kg級決勝結果

土性沙羅(日本)

2-2(判定 ※ビッグポイントの差により土性の勝利)

ナタリア・ボロベア(ロシア)

ストーリー

試合の残り時間が1分を切っても不思議と焦りはなかった。「最後まで絶対に諦めない」。土性沙羅はそう心に誓っていたからだ。相手はロンドン2012オリンピックの女子72kg級チャンピオン。それでも必ずチャンスは来ると思っていた。

そしてそのときは訪れる。0-2とリードされたまま迎えた残り40秒、土性はタックルを仕掛ける。これは返され、逆にバックを取られそうになるが、土性は素早い身のこなしでかわし、バランスを崩した相手の左脚を取った。2点を得るビッグポイント。同点の場合は、ビッグポイントの多い選手が勝者となるため、土性は残り30秒の時点で優位に立った。そこからは相手の反撃を受けるが、なんとか耐え忍び初の栄冠に輝いた。

劣勢を強いられながら、焦りを感じなかったことについては理由がある。

「(自分の)前に試合をしていた(伊調)馨さんや(登坂)絵莉さんが最後の最後まで諦めずに戦って金メダルを獲得したので、私も絶対に諦めないで戦おうと思っていました」

土性が試合に臨んだこの日は、女子48kg級と女子58kg級も行われており、登坂と伊調は共にそれぞれの決勝を終了間際のポイントで制していた。尊敬する2人の先輩が土性に示したのが「最後まで諦めない姿勢」だったのだ。

これまでの土性には勝負に対する厳しさがやや欠けていた。国内では圧倒的な力を見せるが、世界が舞台になるとあと一歩のところで頂点に届かない。2014年の世界選手権の決勝では残り20秒から相手に逆転を許し、準優勝に終わった。

一緒に練習する登坂からは「練習への取り組み方が甘い」という指摘を受けた。筋力トレーニング1つとっても、例えば腕立て伏せの腕の曲げ方が不十分だと、その指摘は細部に至った。しかし、トップレベルの試合において勝敗を分けるのは、そうした細部の差。練習でやってきたことは、そのまま試合に跳ね返ってくる。「こうした甘さがある限り、世界の頂点に立つことはできない」と痛感した土性は、練習に取り組む姿勢を変えた。

その積み重ねが、オリンピックの決勝という舞台で見事に発揮された。勝因について土性は「相手より金メダルを取りたいという気持ちが強かったんじゃないかと思う」と語り、「本当にうれしい。たくさんの方に応援されて支えてもらったので、そのおかげで取れた金メダルだと思っています」と、満面の笑みを浮かべた。日本の女子レスリングにおいて重量級での金メダル獲得は史上初。21歳(当時)の若き女王は、先人が阻まれ続けた歴史の扉をついにこじ開けたのだった。

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