プレーバック・リオ 自分の弱さを認め、新たな強さを手にした萩野公介

リオデジャネイロ2016オリンピックにおいて、日本は金12、銀8、銅21と計41個のメダルを獲得した。選手たちは何を思い、この大舞台に臨んだのか。今も記憶に新しい、感動と興奮に包まれたシーンを振り返る。

プレーバック・リオ 萩野公介が男子400m個人メドレーで金メダルを獲得
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競泳男子400m個人メドレー決勝結果

1位:萩野公介(日本) 4分6秒05

2位:チェイス・カリシュ(アメリカ) 4分6秒75

3位:瀬戸大也(日本) 4分9秒71

ストーリー

「本当に……1人じゃないってことを強く思いました」

ゴールにタッチした瞬間、萩野公介の胸にこみ上げてきたのはそうした思いだったという。4分6秒05という自身が持つ日本記録を更新する泳ぎで金メダルを獲得。男子400m個人メドレーで日本人選手が頂点に立ったのは初のことだ。追いすがる米国のチェイス・カリシュを振り切っての戴冠に喜びがはじけた。

ロンドン2012オリンピックの男子400m個人メドレーで高校生ながら銅メダルを獲得し、翌年の日本選手権では史上最多となる5冠を達成。複数種目で勝てるマルチスイマーとしてのキャリアを順調に積んでいた萩野だったが、2013年に行われた世界選手権の男子400m個人メドレーで5位に終わって以降、苦難の時期を過ごしていた。2015年の世界選手権は大会前の合宿中に右ひじを骨折し、出場を辞退。その2回の大会で金メダルを獲得したのが幼少期からのライバル、瀬戸大也だったということも萩野を苦悩させた。

萩野が自身の殻を破るきっかけとなったのは、指導を受ける平井伯昌コーチからの「もっと弱い自分をさらけ出していい」という指摘だった。それまでの萩野は苦しいときでも強がり、周囲に弱みを見せない傾向にあった。しかし、強くなるためには自分の弱さをしっかり認め、助けを求めることも重要だ。萩野がもう一段上のレベルにたどり着くために必要だったのは、それを再認識することだった。

「オリンピックの舞台は「人間対人間の勝負」になる。そのときに隠し事があったら、レースに臨む前に先生(平井コーチ)が100の力をつけようと声をかけたのに、60くらいしか伝わらないということがあるかもしれない。それではいけなくて、かける言葉すべてが選手の力になっていく必要がある。だから自分の嫌な部分、弱い部分をもっとさらけ出していく必要があるんだということに気づきました」

決勝前、萩野は「自分の力を出し切れ」と平井コーチに背中を押され、レースに臨んだ。その言葉だけで十分だった。2種目めの背泳ぎで首位に立つと、最後まで失速することはなかった。

「残りの50mはカリシュ選手も迫ってきていたのですごく怖かったし、苦しかったです。でもそれも楽しめました」

自身の弱さを認め、殻を突き破った萩野が新たな強さを手にした瞬間だった。

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