ビーチバレーボール
ビーチバレーボール
ビーチバレーに懸ける思い、オリンピック出場のために描くビジョン。東京2020アスリートビジット 溝江明香選手・橋本涼加選手インタビュー
2017 FIVB
オリンピックで最も観客動員数が多い競技、ビーチバレーボール(※)。
東京2020組織委員会は、2018年6月15日、ビーチバレーボールで東京2020大会出場を目指す溝江明香選手、橋本涼加選手を虎ノ門オフィスにお招きする「東京2020アスリートビジット」を開催し、職員と交流を深めました。また、競技の魅力に迫るためインタビューを行い、東京2020大会への思いなどを語っていただきました。
(※)ロンドン2012大会、リオ2016大会時
溝江明香選手、橋本涼加選手インタビュー
インドアバレーボールとの違い。ビーチバレーボールの魅力
まずは、インドアバレーとの違いについて教えていただけますか。
溝江明香選手(以下、「溝江」)
インドアのバレーボールとは、コートのサイズがほとんど変わりませんが、その中で2名1チームで戦うスポーツです。ビーチバレーにもポジションがあって、「ブロッカー」といって前にいる選手、もう1人が「レシーバー」といって後ろで守る選手に分かれています。2人しかいないので、声を掛け合ってプレーしています。
下が砂浜というのはすごく大きな違いだと思いますが、そもそも足は熱くないんですか?
橋本涼加選手(以下、「橋本」)
熱いですよ(笑)。ルール上、靴は履いてはいけないんですが、審判に許可をとればサンドソックスっていう競技用の靴下は履いていいとされています。ただ、足の指で砂を直接噛んで感触をつかんでいるので、私たちは熱くても履かないようにしています。
それで編み出したウラ技があって、砂はずっと日が当たっているから熱いので、足で穴を掘って中の砂を表面にかき出すんです。そうすると熱くないんですよ。
海外での試合も多いと思いますが、国や会場によって砂の質が違ったりするのですか?
会場によって砂の質は全然違いますね。選手によって好みもありますし。
国でいうと、タイはけっこう固いですし、リオは深かったです。ヨーロッパは街中に特設会場を作ることが多くて、多くの場合はサラサラの砂が使われていますね。
砂の色も結構重要で、白いと光を吸収するので熱くなりにくいんですけど、逆に黒いとすごく熱いです。ただ、白すぎるとまぶしいというのもあるので、その中間ぐらいがいいですね(笑)
屋外でのスポーツということもあって応援方法も特徴があるかと思いますが?
溝江
一番の大きな特徴はDJがいることですね。DJがゲームの流れや試合感など、ゲームの流れを見ながら曲を流しています。選手からは入場曲をリクエストすることもできます。また、点数が入ったあとなどプレーが途切れるたびに曲を流してくれて、好きな曲がかかるとテンションが上がりますね!
2017 FIVB
自由であるがゆえに、生まれる責任感。
橋本選手はインドアから転向して3年目ですが、大所帯だったインドアの時と比べて自分が変わったと思うことはありますか?
橋本
大勢の中の1人と、2人しかいない中の1人は全然違っていて、自由である分、すごく責任感が強くなった気がします。出場する大会や練習スケジュール、トレーニングメニューを自分たちでプランニングしてコーチやスタッフと相談したりします。試合中はコーチはコーチングできず、選手2人で相談して対応していくことが必要な競技なので、普段から自主性が求められるんです。
今は平塚をホームビーチとして活動しておられますよね。
溝江
はい、今は平塚のビーチを使っています。コートの使用順は日本代表であろうと誰であろうと関係なく、早い者順なんです。予約とかではなくて、当日勝負というか、使いたいコートが使われていたらその方々が終わるまで待つしかないんです。特に夏場は利用者が増えるので、朝6時半に行ってコートの確保をしたりすることもあります。
平塚のコートは10面あるんですが、その中でもコンディションの良いコートは競争が激しいので「あと10分早く来ていたらあのコートとれたのに!」とか、午前・午後の二部練習の日は午後のコートがとれないこともありますね。
ただ、所属先のトヨタ自動車が愛知県にアウトドアコートとインドアコートをつくったので、来月からは場所の確保といった心配や天候の心配もなく練習に集中できるようになります。すごくありがたいですね。
食事は自分で用意されるのですか?
溝江
自宅にいる時には自炊しますね。栄養面はトレーナーに相談したりはしますが、食事から選手の責任なので。年100日ほど海外にいた時もあるほど遠征が多いので、栄養が十分にとれない食事になるということが多いんです。その中で最善の食事がとれるように訓練しています。
オリンピックを戦うこととは国を背負うこと。その重み、責任
溝江選手は過去にもオリンピック予選に挑戦されていますが、前回の経験を踏まえてメンタル面など変わったところはありますか?
溝江
オリンピック予選となると、国を背負って出場しているので、プレッシャーを感じることがあります。今は3回目の挑戦中で、「いつもの大会と違う」ということを知った経験、これまでの反省点を活かせるというのは私にとって大きなプラスだと思います。
橋本選手はインドアから転向後オリンピック初挑戦となりますが、どんな心境ですか?
橋本
正直、今は目の前のことに精一杯でそこまでは考えられる状態ではありませんが、溝江選手から国を背負って戦うことの重みなどを聞いて、プレッシャーや責任をすごく感じつつも、そんな状況でもビーチバレーを楽しめられるようになりたいと思っています。
私は父がオリンピック選手だったので、オリンピックがどういうものなのかを小さいころから聞いていたこともあって、オリンピックがすごく身近なものでした。父が経験したものを私も経験して、さらにその上をいきたいと思っています。
(左:橋本涼加選手、右:溝江明香選手)
プレーする側、支える側、準備する側。日本という国が1つになって大会を作る。それが「One Team」
東京2020組織委員会は「one team」をコンセプトの1つに掲げ、大会準備を進めています。スタッフや仲間、支えてくれる方々の存在など、one teamを感じることがありましたら教えてください。
溝江
私が選手として大会に出るには、トレーナーやコーチ、スタッフの方、サポートしていただいている会社や従業員の方々など、本当に多くの方々が関わっていることを感じていました。
また、今日組織委員会のみなさんにお会いして、いろいろな方向から大会を作ろうとしていること、日本という国が1つのチームになっていることを実感しました。だからこそ、私たちアスリートが結果を出さなくてはいけないと思いますし、子供たちにスポーツって素晴らしいって思ってもらえるようにしたいと思います。
大会まであと2年となりました。「あと2年」は長いと感じますか?短いと感じますか?
橋本
インドアから転向してからの2年が本当にあっという間でした。いい意味で、残りの2年間はもっと焦っていきたいと思います(笑)
インドアから転向してきてすぐの時はペアも決まっていない、ポイントも持っていない、そういう状態だったので不安はすごくあったんですが、それ以上に「何かしてやろう」という覚悟がありました。
今はパートナーがいるのでそういった不安はなくなりつつあって、今まで以上に覚悟が決められるようになりました。
トレーニング、試合など2人で活動する時間がとても長いと思いますが、コミュニケーションをとるうえで大事にされていることはありますか?
溝江
約束事にしているわけではないんですが、ビーチバレーに関係ないテーマを一つ決めてその話題を掘り下げていくことはしていますね。最近だと、本当に他愛のないことですけど、共通の知り合いのいいところを挙げていくとか。
私は以前先輩とペアを組んでいたので、コミュニケーションの際に話を主導するのは先輩に任せていたりして「学ぶ側」だったんですが、今は逆の立場なので、「先輩大変だったんだな」って思います(笑)
インタビューに答える橋本選手
銭湯で結成!?今だから話せる、ペア結成秘話。
お二人がペアを組むまでの経緯を教えていただけますか?
溝江
元々同じチームですし、年齢やポジションのことなどを考えて決めました。
橋本選手は若いですし、東京オリンピックを目指すにあたって伸びしろもあると思いました。
溝江選手が橋本選手に声をかけたのですか?
橋本
そうですね。銭湯で話したのをすごく覚えています。
銭湯??
橋本
ペアを組む前から、元々チームの中でも組んで練習することが多くて、その流れでというわけではないんですが、よく2人で銭湯に行っていたんですよ。銭湯で東京オリンピックのビジョンなんかを話しているときに、私は溝江選手と組めたらいいなと思っていました。
溝江
私は今もそうですがビーチバレーに人生を懸けていて、東京オリンピックに対して思いが強かったんですが、橋本選手はインドアから転向してきたばかりでしたから、ビーチバレーにどういう気持ちで来たのか、ビジョンや人間性もみてみたいと思いながら話をしていました。銭湯で(笑)
それぞれが持つ、オリンピックへの、ビーチバレーへのビジョン。
溝江選手が持っていた「ビジョン」とは、どんなものだったのでしょうか?
溝江
東京オリンピックでメダルをとること、それまで心が折れないこと、お互いが信頼できることです。これから伸ばしていく部分も多いとは思いつつも、橋本選手の考えが私のビジョンとマッチしたと思ったので、ペアを組むことにしました。
今後ビーチバレーの競技人口を増やしていくために、東京オリンピックは一つの契機になると思いますが、アスリートとしてどのようにお考えですか?
溝江
発信していくことが大事だと思っています。現状ビーチバレーが日本の競技の中で有名な競技ではないことは自覚していて、その中でも少しずつですけどSNSなどで発信できるようになった。そういったものを活用して、少しでもビーチバレーの魅力をわかってもらいたいと思っています。
橋本
私はそこまで発信しているわけではないんですが、その分考えているのは「私自身が強くなること」。私が強くなって結果を残すことでみなさんがビーチバレーのことを耳にしたり目にする機会が増えること。それが今一番大切だと思っています。
ビーチバレーボールはロンドン2012大会、リオ2016大会ともにオリンピックの中でも最も観客動員数が多い競技だったそうですね。
溝江
そうなんですよ!チケットが売り切れるのも陸上男子100メートルの次に早いそうなんですね。それだけ人気の競技だといえると思います。
アメリカ・ヨーロッパ・ブラジルではものごい人気競技でいつも会場は盛り上がっています。日本でも人気競技になるためには東京オリンピックが良いチャンスです。前の東京1964大会で6人制バレーボールの人気に火がついたように、今回はビーチバレーボール人気に火をつけるチャンスです。
だからこそ、私たちが結果を出して応援したくなるような選手になる必要があると思っています。
溝江選手・橋本選手ともに、競技に対して強い責任感を持って取り組んでいることが伝わってきたインタビューでした。また、結果を出すことで応援する人が増え、それがビーチバレーの普及につながるというアスリートの原点ともいうべき言葉もいただきました。私たち組織委員会のスタッフも最高のパフォーマンスを発揮できる大会準備を進めてまいります!
インタビュー動画
競技紹介
ビーチバレーボールの競技のルールや魅力、東京2020大会の展望をご紹介します。