モッコの物語 | しあわせはこぶ旅 モッコが復興を歩む東北からTOKYOへ

沢則行さんによるデザイン
沢則行さんによるデザイン

又吉直樹 作

おおきなおとが きこえています
はなびのような、カミナリのような、こうじのような、おおきなおと

まどをあけてみると まっしろいゆきのせかいに
モッコのあしおとが ひびいているのでした

とてもおおきなモッコが しろいいきをはきながら
ゆきのまちを あるいていきます

モッコのあしおとにあわせて
ダンサーたちが ふしぎなおどりをおどっています

モッコもまねしておどりますが
うごきが きみょうでみんながわらっています

モッコのあしおとにあわせて
バンドがたのしそうにえんそうしています

モッコもおんがくにあわせて
うたいますが かなりおんちでこまります

モッコが川をとびこえると
おおきなあしおとといっしょに つよいかぜがふきます

モッコのあしもとに「しんくう」ができて
くろいあなから いろんなものがみえました

ほし、つき、おはな、おもち、らくだ、らくごか、くつはくときにつかうぼう、
ラッパー、おおもののよこにいるつうやくさん、ポッケにずっとあったふるいあめ、
あなたにはなにが見えますか

「べんがろん ぐいっじぃな ぞぼいぞぼい! 」
モッコのおなかのおとです

「ずどずど ねででででぇー! 」
モッコのあくびです

モッコは しあわせをはこぶためにあるきつづけます
モッコは にんげんのことが だいすきです

モッコが つりびとがさかなをつれたか
いわかげからのぞいています

モッコがこどもたちとのサッカーでキーパーをしています

モッコが献血しています

モッコがコンビニのまえでヤンキーたちと
たむろしています

モッコがキャッチセールスにつかまった
おんなのこをたすけようとしています

おもいにもつをせおった たいへんそうなおばあさん
モッコは おばあさんごと てのひらにのせました

だけど おばあさんは にもつをせおったままだから
おもさはあまり かわりません

モッコは おっちょこちょいです
だけど なぜか おばあさんは えがおです

モッコはいねかりをてつだいます
だけど しゅうかくしたより たくさんたべます

「べべべんべべべべ ずぐずぐべろーん! 」
モッコのあくびです

「みゃんが みゃん が」
モッコのねごとです

こどもたちが モッコとなかよくなりました
モッコはようしゃなくすもうでぜんいんたおします

つぎのまちまであるくあいだ
モッコがこどもたちのはなしをきいてくれます

うちゅうのはなし、はつこいのはなし、おかあさんのはなし、
えんぴつのうしろについている けしゴムのはなし

わかれをおしんだ こどもたちがいいました
「ぼくたちのまちでいっしょにくらそ」

モッコはあるきつづけます
「ちがーけしぎがみっちぃから いろんなえがおがみっちぃがらあるぎつづけんだ
でぎっごどしがしねえし すきなようにやるしかねえべ」
そんなことをかんがえながら

でも モッコは ひゃくねんくらいとまっていることもあります
そのへんはあいまいなのです

こどもたちが なきました
「はなれたくねぇ」となきました

「みんなどモッコのおもいでは えいえんにみんなどモッコだけのもんだ
とおぐはなっちゃどしても みんながモッコをおもいだすとき
モッコは みんなだけのもんだ」
モッコやさしいこえで いいました

「なにいってんだ? 」というかおをしている男の子
そんなことより 「モッコって、はなせんだ」とおどろく女の子
とにかく、みんなとモッコは ともだちです

あっ そうだ さけぼう
「うぉぉ~ ! ! ! ! ! 」
大きなモッコがさけびます みんなのために

そのとき だれかがだれかをすきになり だれかがゆめをおいはじめ
だれかがじんせいをおえようとして だれかのいえにあらたないのちがうまれ
だれかがおおごえで わらいました
モッコは あるきつづけます
ゆきがとけて はながさきはじめたまちを
モッコは あるきつづけます

終わり